悪役令嬢は異世界から来た少女のせいで婚約破棄されました。
私には許嫁が居る。
それはこの国の王子だ。
許嫁と言っても数いる中の婚約者候補の一人という事で、私はあらゆる手段を用いて婚約者候補たちを蹴落としていった。
それはもうありとあらゆる手段を使って蹴落としていった。
結果、婚約者は私一人となり。
婚礼の日がやってきた。
私と王子は婚礼を行うはずだった。
行うはずだったのだ。
その式場に異世界から転移してきた一人の少女が現れるまでは。
王子は少女に一目惚れした。
少女も王子に一目惚れだった。
私には、二人の間に入り込む余地など存在しなかった。
王子は少女に求婚した。
少女も王子の求婚を心から喜び求婚に応じた。
それでも私は二人の仲を認めることはできなかった。
だから私は、妾としての立場に甘んじることしかできなかった。
王子は満面の笑顔を少女に向ける。
私には腫れ物に触るかのような冷たい表情で接してくる。
私は少女に嫉妬した。
しかし少女はそうではなかった。
少女はお互い妻として仲良くしましょうねと、私に笑いかける。
ははは……何を言ってるのこの女は。
仲良くなんてできるわけがないじゃない。
私は何人の婚約者候補を蹴落としていったと思っているのか?
この娘には知る由もないのだ。
それでも私は少女とは表面上仲良く振舞うことにした。
そうでなければ王子からの寵愛が受けられないからだ。
けれどそのような関係は長く続くはずもない。
ある日私は王子の子供を懐妊した。
王子は腫れ物を扱うかのように私を離宮に幽閉した。
まるで私の子供が自分の子供であると知られることを恐れるかのように。
王子は私の事を愛していない。
私は妾でしかないのだ。
その事実に私は不思議と絶望することはなかった。
あははは……。
そうだ、そうなのだ。
王子が愛しているのはあの少女なのだ。
私は全く愛されてすらいない。
このお腹の子供すら。
私の心に深くどす黒い感情が渦巻く。
そうだ、あの娘さえいなければ。
あの娘さえいなければ、王子の愛は私のモノ。
だから私は少女を暗殺しようとした。
しかし、いとも簡単に失敗し。
今、私は絞首台に晒されている。
どこで私の人生は間違ってしまったのか……。
あの娘さえ現れなければ、違った運命を辿れたのだろうか。
私は冷たく冷め切った王子や民衆の眼に晒されてその一生を終えた。
はずだった。
私は見ず知らずの世界で幼い少女になっていた。
そして私は鏡を見て驚愕する。
私のこの姿は。
あの少女の幼い姿そのものだったのだから。
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