1.
彼氏に振られ傷心旅行をしていた、私は振られた時のことを思い出す
「好きな子ができたんだ、千矢[ちや]のことは嫌いじゃない。でもごめん別れよう」
そう言われた瞬間、あぁ、やっぱり、この頃素っ気なかったもんねと思った。
「わかった。いいよ別れよう」
それを言った私の顔はとてもすっきりしていたと思う。
振られた時のことをよく考えると泣けてくる。
ははっ、と乾いた笑いをあげながらホテルまでの道を歩いていると、『あなたの人生変えます』の看板のかかった店が右手にあった。なんか面白そうと思って気分転換にはいってみた。
店の内装は西洋アンティークで揃えられた、中世のヨーロッパ貴族のようだった。なんか素敵。店主はいなかった、きっと奥にいるのだろう。
奥に声をかけ店を見回ることにする。
店の品物は様々だった。宝石のようなものもあればアンティークのようなナイフもある。1番高そうなケースには赤いルビーのような宝石のピアスがある『異世界に行けますよ』と書いてある。なんか、あれはヤバイ。
それを見ていると店の奥から中年のおじ様と呼べるような、好中年が出てきた。
「良いものに目をつけてらっしゃいますね。異世界にいける商品でございます」
「は、はぁ」
何この人?!マジで頭大丈夫なの?!
「いえ、頭は正常ですよ」
なんか知らないけど顔に出てたかな?
「でも、異世界なんて存在しないでしょう」
そう、もう25になって異世界なんて言っていられない、現実はいつだって厳しいんだから。でも中学校の時はちょっとゲームの世界に行ってみたいとか考えたこともあったけどね。今は異世界転生や転移のライトノベルが流行ってるらしいけど。
「お客様、この世界とは別の世界に行ってみたいとか考えたことおありでしょう?」
「はい、まぁかなり昔のことですが」
「狐にバ化かれたとでも思ってその商品を買ってみたらどうでしょう?お安くしますよ」
「いえいえ、お高いんでしょう?お値段は」
「いえ、10万円ですが、本当に異世界に行けるのなら安いものでしょう」
「は、はぁ」
根っからそんなもの信じてはいない。
でも、少し興味はある。10万円かぁ。決して安くはない、だって私はただの事務員なんだから。
でも、私は傷心のためにこの地に来た。異世界に行けるなんて信じていないが気分転換にはなるだろう。
色々考えた末買うことに決めた。
「じゃあ、買います」
「はい、慎重に決めるんですよ」
店主はオシャレな紙袋に入れてくれた。
ホテルに帰ったら開けてみようと決めてホテルに向かって歩き出した。
ホテルに着くと、まずお風呂に入った。パジャマに着替え寝る準備を済ませた。