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俺様アレルギーの私が俺様属性に愛される悪夢みたいな話  作者: Sio*
俺様アレルギーの私が俺様属性に愛されるまで
8/11

07.知ってしまいました。

チチチ…


心地よい、鳥の鳴き声。

ふわっと意識が上昇する。


「ん、…あれ?」


なんか、いつもより布団が暖かい…



「っ!?!?!?!?なっ、なななっ…!!!!」



なんで恭平が私の布団に!?!?!?



「うるさい、佐藤さん…」


腰を引き寄せられ、再び布団の中に引き込まれる。

え、佐藤さん…?


「ちょ、恭平さん…!」


「暴れるな…」


寝惚けてるのかぎゅっと掴んで離さない。

いやふざけんなよ。


「私は犬じゃないですーーーーー!!!!!!」


「ばうっ!」


「あっ、本物の佐藤さん!!」


ようやく会えたね!



ベットに覆いかぶさり、私と恭平の顔を交互に舐める。

そうだよ、なんで今まで会えなかったんだろう、なんで中庭行かなかったんだろう。

もふもふふわふわの佐藤さんを撫でながらゲーム内でも癒されていたことを思い出す。

はー、この手で触れる幸せ…。


「佐藤さん、会いたかったよ…」


「わふわふっ」


ぎゅっと抱きしめると佐藤さんも嬉しそうに返してくれた。

あーーーもう、好き。癒し。


そう佐藤さんといちゃついてると、ようやく隣が起きた。


「……なんで野央が俺の部屋にいんだ?」


「それはこっちのセリフです」


「うわ、まじか…佐藤さん、まだ時間あるから寝直そうぜ」


そういえば、恭平と佐藤さんは寝る友なんだっけか。

そんな小話を誰かの本編で聞いたことがある。

え、てかうら若き乙女と同じ布団に入っておいて謝罪なしかよ。


「ふんっ」


「え、佐藤さん!?野央のがいいってのかよ!!」


恭平の誘いにそっぽ向き、私に擦り寄ってくる佐藤さんはなんとも愛らしく、時間めいっぱいまでもふもふした。




「あ、野央ちゃん」


「げっ」


その日、午後から収録の音楽番組に着いて行ったら、熊谷さんに遭遇した。

まだあの手はヒリヒリする。


「偶然だね、収録?」


「…まぁ、そうですね」


「そっか。僕は挨拶に来たんだ」


ほんっと人に気にせず話すな、この人は。マシンガンすぎる。


「そうだ野央ちゃん。今夜空いてる?」


「今夜?あー、たしか」


スケジュールを思い出すが、たしか今日はこの収録の後、新曲の打ち合わせ、それさえ終わればフリーだったはず。

ってなんでこいつに教えなきゃいけないんだ。


「…それがなにか」


「ディナーにでも誘いたくてね。どう?」


「Elysionプロデュースしたいからまずサブマネの私からですか?」


「うーん、それもあるけど…」


とんっ、と壁に押し付けられる。

…これは、壁ドンってやつか…?え、吐き気する。


「単純に野央ちゃんと仲良くなりたいんだ」


「お断りします」


するっと抜けたつもりだったが、手首を掴まれた。

うっ、手の甲が痛む。


「恭平の過去、知りたくない?」


「恭平さんの、過去…?」


たしか熊谷さんは恭平と昔馴染み。

何故あんなにElysionに執着し、他を蹴落とす行動をとるのか。


「…それは、まぁ」


「決まりだね。場所決めたら連絡するね」


互いのスマホに連絡先を登録し、熊谷さんは去っていった。


恭平の、過去。

望夢や一樹の過去編で少しだけ語られていた。

自分のせいで父親を亡くした。その事に責任を感じている、と。


でも私は恭平ルートは例え過去編…短編の番外編ですら買ってないし、他メンバーとのセットになっていてもプレイしてない。

したのは全部読破しないとイラストが貰えなかったり特典ストーリーが読めない時くらいだ。

しかもすっとばしていたので全くと言うほど知らない。


そう、なにも知らないのに、ただ俺様というだけで避けてきて、後悔しているのだ。

このElysionの絆は強い、それは他ルートでも嫌という程見せつけられたのでよく知っている。

主人公も今でこそ入れてもらっているけど、10年という長い月日を共にして、ずっとやってきたのだ。

そしてそれをまとめ、引っ張りあげているのが恭平。

Elysionへの思いは、きっと、誰よりも強い。

私は、その理由を知りたい。




「…うん、とりあえずこんなもんか」


「あとは歌詞が出来ないことにはどうにもならんしな」


「うっ、すみません…」


合間合間にフレーズを書き溜めてはいるが、なんかチープな言葉でどれもしっくり来なかった。

恭平や望夢に見せても同じことを言われるのだ。うん、わかってるんだ、わかってるよ…。


「あ、終わりならもう出て大丈夫?深夜ロケあるんだよね」


「俺も明日早朝ロケで前入りするから行くわ」


「買い物してこよーっと」


「あ、じゃあ私も…」


「あ?お前が?」


「ニナさん怖っ」


きっとそんな暇あるなら歌詞書けって事だろう。

ごもっとも、ごもっともなんだけど…えーと、えーと、あっ!


「母が、こっちに来てるんです!!」


「え?」


「なんか、家に来たいとか言ってるんですけど、ほら、この状況言えないじゃないですか!!だから誤魔化しとか色々したくて!!」


「なんだ、それなら早く行ってこい」


…え?


「親御さん、待ってるんだろ。ちゃんと親孝行してこい」


「あ、はい…行ってきます」


恭平のおかげで、難関かと思われた外出は簡単にすることが出来た。

前回茉莉花とランチの時は大変だったのに…。


「違う、親孝行って言ってた…」


恭平は、きっとお父さんに親孝行、したかったんだろうな…。


鼻の奥がつんっとしたけど、これから外に出る。早く引っ込めないと。





「…お待たせしました」


「こんばんは野央ちゃん。来てくれて嬉しいよ」


「恭平さんの話聞く為ですから」


「…だよねぇ。でもその前に腹ごしらえしよう」


案内されて来たのはいかにもお高そうなフレンチレストラン。

めっちゃ緊張する…。


一通り食べ終わり、残すはデザートだけとなった頃、私はようやく切り出せた。

しょうがないでしょ、食べてる時は無言になるんだから。


「で、恭平さんの過去ってなんですか」


「まずは…恭平のお父さんって知ってる?」


「いえ、アイドルだったとしか」


「本当に興味ないんだね…」


はぁ、と深い溜息を吐かれた。酷いな、私の好みは渋いおじ様俳優なんじゃ。


「名前は篠村優…日本に留まらず、海外でも名を馳せた世界的アイドルグループのリーダーだった」


「お父さんも、トップアイドル…」


「そのプロデュースしてたのが僕の父。それで子供の頃から顔見知りだったんだ」


「なるほど」


熊谷さんが執拗にプロデュースを迫ってたのは親と同じことをしたかったからなのか。


「優さんはもう亡くなって20年以上かな…溺死だった」


「溺死…溺れたって事ですか」


「そう。それも、海で溺れた恭平を助ける代わりに…」


「っ!」


まだ27歳…今の恭平と同い年の頃のこと。

アイドルとしてもまだまだこれからだった。

多くのファンが悲しみ、怒り、信じることが出来なかったという。

あまりにも早すぎる、突然の死。


「それ以来恭平は、うん、なんて言うのかな…罪を償うって言うのかな」


「償うって…」


「お父さんの代わりに、アイドルとしてやっていくってこと」


「じゃあ、もしかして」


「トップアイドルになるのも、優さんを追いかけてのことだ。それも、償いだろう」


20年以上前だと、恭平はきっと小学生とかそこらだ。

その頃から罪の意識を抱え、父親の代わりにElysionを成長させ、トップを走ってきたのか。


なんて人なんだ。


「さて、とりあえずはここまでかな?」


「え、他には」


「時間も遅いしね。次は…」


熊谷さんの手には


「ライブ…?」


「そう、ちょっとした伝でね。どう?」


「DOLLS…」


恭平が、今後出てくると言っていたグループ。

…敵情視察的な意味でも良いだろう。

それに、他にも聞きたいことはある。


「わかりました、お付き合いします」


「ありがとう、楽しみにしてる」


先日とは反対の手の甲にキスを落として行った。

……また洗わないと。



次はどう誤魔化せばいいかなんて考えながら帰路についた。

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