表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/25

アップデートとGM

 私がゲームをやり始めた頃、ラテールは『神運営』と言われていました。


 皮肉や当てこすりの類ではありません。心からの賛辞です。

 これはネットゲーム界では驚くべきことです。何かあった時に一時的に言われているだけ、というのは結構見かけるのですが、恒常的に『神運営』と言われていたゲームを私はラテール以外に知りません。


 メインターゲットが女性のゲームということもあって、プレイヤー層のトキメキ(ちから)が高かったのかもしれません。


 しかし私が思うに、それだけでなく、ラテール運営が愛されたちゃんとした理由があるのです。

 それは大きく分けて三つ。




 一つは課金要素でしょう。


 当時、ラテールの課金は主にファッション装備のためにありました。


 ファッション装備とは、性能を持たず、見た目だけを変更するような装備のことです。通常の装備蘭とは別にファッション用の装備蘭があり、そこにファッション装備を入れると強さはそのままでオシャレな格好になるのです。


 課金はそのオシャレな服を手に入れるための手段であり、強くなるための手段ではなかったのです。……まぁ『ペット』という例外はありますが、ペットはかわいいのでセーフということにします。


 ガチャも(当時は)ありませんでした。欲しい服を選んでその分の料金を払えば入手できるような、普通のお買い物です。だいたい2・300円も出せば買えます。

 そのため『買わされている』『お金を使わされている』という感覚が薄く、せっかく課金したのに結局無駄になった、などということが(当時は)なかったのです。




 二つ目は気合の入ったアップデート。


 ラテールは毎週水曜日に定期メンテナンスを行います。この時にバランス調整をしたりバグをなくしたり操作性を上げたり色々するのですが、毎週必ず何らかのアップデート、つまり追加要素があったのです。


 かわいいファッション装備や新ダンジョンに新システム、それに街の設備。時には街自体が追加されることもありました。

 『大型アップデート』と呼んで差し支えないものが、2・3週ごとにポンポンと行われるのです。その間にあるファッション装備などの細かいアップデートも、オシャレに敏感な我々には嬉しいものでした。


 それがなんと4ヶ月ほど続きました。

 しかもそれも確か一週だけアップデートが途切れただけのことで、その後もまたガンガン新要素が追加されていきました。


 極めつけは、アップデートが先行して行われたことです。


 ラテールは韓国の会社が開発したものを日本で配信しているゲームです。そのため、基本的には韓国で実装されたものが日本用に調整されてアップデートされるようなっています。


 にも関わらず、なぜか韓国よりも先行して要素が追加されたことがあるのです。……それどんだけ仕事が早くても不可能じゃないですかね? どうやったの?


 それにただ韓国の後追いをするだけではありませんでした。日本独自仕様の要素やイベントも多くありましたし、向こうから要望が出て逆輸入されていったものもあります。


 ラテールは週を追うごとにどんどん楽しくなっていくゲームだったのです。




 そして、三つ目はGMです。


 毎週水曜日のアップデートですが、プレイヤー達は追加される新要素の他に、もう一つ楽しみにしていたものがありました。



 それが『GM交換日記』というものです。



 (ゲーム)(マスター)とは、ユーザーからの問い合わせ対応や不正者の取り締まり、イベントの進行といった、現場での運営のお仕事をしている方々のことです。


 そしてGM交換日記とは、そんなGMさん達がゲーム内の(スクリーン)(ショット)を使って紙芝居形式の茶番――じゃない、小劇場を繰り広げるコーナーです。


 最初は『交換日記』という名前どおり、GMさん達が日記という体で、街の施設の紹介やシステムの簡単な説明を持ち回りでしていました。


 しかし徐々にドタバタコメディ色が強くなっていき、そのメンテナンスで追加される新要素でちょっとしたおふざけを披露する場になっていきます。


 この茶番――じゃなくて小劇場に登場するGMには一人ひとり個性があり、単純な読み物としてもとても面白かったのを覚えています。


 名前を出すのは控えますが、よく出演していた方々は今でも覚えています。

 竹を割ったような性格で脳筋気味の姉御、どんなに収集付かなくなってもまとめてくれるしっかり者のお姉さん、『とりあえず迷惑かけるならコイツに』みたいな風潮のあった苦労人、ド天然のトラブルメーカー(だいたいコイツの仕業)――。

 

 この賑やかなGMさん達が織り成すどこかほのぼのとした騒動は、当時のプレイヤー達の間では非常に人気が高いものでした。少なくとも私の周りの人は全員これを読んでいて、メンテナンスが明けるとまずはGM交換日記の感想を話し合ったものです。


 GMに対して好意的な人が多かったのです。



 そのため、本来なら雰囲気が悪くなってもおかしくないような場面、例えばメンテナンス時間が延長されたり、サーバーが落ちてログインできなくなったりした後。


 『まぁどうせ○○(トラブルメーカーGM)がサーバーのコンセントに足でも引っ掛けたんでしょ』などといった冗談が言われ、ゲーム内の雰囲気があまりギスギスしませんでした。



 ちなみにGM交換日記はラテール公式HPで公開されていたのですが、残念ながらもうだいぶ前に見れなくなってしまいました。


 もう一度見たいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ