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辻WWとお礼 その1

 『辻ヒール』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?


 通りすがりに他プレイヤーを回復させる行為のことですね。私もこれに何度も助けられたことがあります。ピンチの時にこれほどありがたいものはありません。


 しかし、お薬ガブ飲みファンタジーラテールでは辻ヒールをする機会は少ないです。お薬ガブ飲みであるため、緊急時以外HPは常に満タンに近いのです。


 そのためラテールの辻ヒーラー達は、たいてい別のスキルでサポートを行います。



 それが辻(ウィンド)(ウォーク)です。



 ウィンドウォークとは、風マジシャンが覚える移動速度を上昇させる補助スキルです。ですが非常に優秀なスキルですので、他の属性のマジシャンも取ってる人は多かったです。


 ラテールの狩りは、基本的に走る→倒すの繰り返しです。そのため移動速度が上がることは、そのまま経験値効率に直結するのです。特にPTプレイでは敵の殲滅速度が上がってほとんど立ち止まる時間がないような戦いになることもあるので、ウィンドウォークの有無で効率がかなり変わってきます。


 そして何より、早く動けるのは気持ちが良いのです。

 HPが減っていないと意味がない辻ヒールとは違い、辻WWは常に喜ばれました。




 こういった辻ヒーラーや辻(ウィンド)Wer(ウォーカー)――まとめて『辻さん』という――の中には、独自のこだわりを持つ人達が結構いました。


 一度辻ヒールしたら絶対に死なせないように、その人が敵を倒すまで付きっ切りで回復し続ける人。ウィンドウォークだけでなく、自分が使えるサポートスキルを絶対に全部使う人。女キャラにしか辻しない人。


 中でも異彩を放っていたのは、俗に言う『辻したら絶対にお礼言われる前に立ち去るマン』です。


 その名の通り、辻スキルをかけた後は振り返りもせずに去ってゆきます。かわいいアバターと親切なプレイに反して、非常にハードボイルドな生き様です。

 しかしこのタイプの辻さん達には天敵が存在しました。


 それが『辻されたら絶対に面と向かってお礼言うマン』と呼ばれる人達です。


 ラテールではたいてい、お礼は『しゃがみ』で表現されます。

 本来は避けきれないダメージを軽減するための動作であるしゃがみは、コミュニケーションの場では『おじぎ』と『絶望』を表現するのに使用されます。


 しゃがむと両手で頭を守り、表情が見えなくなります。それが頭を抱えているように見えるのです。「なんてこったあああ」や「やっちまったあああ」といったセリフが似合いそうな感じですね。このしゃがみと立ちを素早く繰り返せば、ペコペコと頭を下げているように見えるのです。


 辻された時、たいていの人はこれで少しペコペコしてから狩りに戻ります。

 しかし『辻されたら絶対に面と向かってお礼言うマン』は、チャットでお礼を言わないと気がすまないのです。



 チャットをするために文字を打ち込んでいる間、キャラクターは身動きが取れない状態になります。そのためPTプレイ中などには長時間の中断を避け、「あり」や「ども」などの省略しまくった言葉を使用するのがむしろマナーでした。


 しかし、ソロ中のお礼言うマンはそんなことを気にしません。フルで「ありがとうございます」と言おうとします。しかし、そうしている間に立ち去るマンは逃げてゆくわけです。


 この瞬間、立ち去るマンvsお礼言うマンの激しい追走劇が始まります。


 そしてそうなると、極稀にもう一人の登場人物が出現し、この追走劇に加わることがあります。



 それが『決着を絶対に見届けるマン』――。そう、私です。



 私がラテールで見届けた追走劇を二例、紹介したいと思います。

 長くなったので二つに分けます。

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