転職と狼槍卒業 その1
そんなこんなでラテールを楽しんでいた私に、大きなニュースが飛びこんできました。
なんとラテールに『転職』が実装されるのだとか。
MMOの世界では転職というと、大抵の場合は職業の進化を指します。
長所を伸ばしたり短所を消したり、新スキルが追加されたり既存スキルが強化されたり、なにかとメリットが多いのが転職です。
当然プレイヤーは湧きました。しかし告知の内容はあくまでも概要のみで、細かい部分の説明はありませんでした。
そして告知されてから実装までは、一ヶ月近く期間が空きます。中には楽しみすぎて待ちきれないプレイヤーもいて、既に転職が実装されていた韓国版ラテールに潜入して調査する人まで現れました。
しかし我々すろーらいふ!のギルドメンバー一同は、また例によってそれらの情報を遮断しました。
そして来るべき日に備えて、レベルを上げ始めます。
とは言っても当時のレベルは70台の後半で、告知によると転職が可能になるのはレベル80からです。
少しだけペースを上げてそれに備えながら、告知のざっくりとした説明を元に妄想を膨らませて遊んでいました。
転職はラテールにある四つの職業『ファイター』・『シールダー』・『レンジャー』・『マジシャン』に、それぞれ二つずつ『2次職』と呼ばれる進化先が追加されるというものでした。
私がやっていたファイターから派生する2次職は、『ウォーロード』と『ブレイダー』の二つ。
ウォーロードはどうやら正統進化のようでした。今までのように、両手剣や槍で戦う職業です。
そしてブレイダーは新しく追加される武器、『二刀』というものを使うようです。当時のファイター達は、こちらに強烈な反応を見せました。当時から、二刀流というのはロマンある響きだったのです。
他の職業も、基本的には正統進化か新武器かといった二択でした。
ギルドでいつもPTを組む四人組の中に、ファイターは私を含めて三人います。
私以外の二人は、どうやらブレイダーに心惹かれている様子でした。
しかし私はウォーロード一択です。理由は単純、ウォーロードならば狼槍が使えるのです。
そしてもう一人の人、伊勢さんはシールダーで、2次職は『テンプルナイト』と『モンク』でした。
テンプルナイトが正統進化、モンクがナックルで戦う職業です。1次職では全職業が装備できていたナックルでしたが、2次職になるとモンクしか装備できなくなってしまうようです。
当時のナックラーはファイターが最大派閥で、その次がシールダー、そこから大きく数が減ってレンジャーという感じでした。そして極々少数の選ばれし民が、殴りマジシャンでトキメキ力の高さを見せ付けていました。
シールダー以外の彼らは、大体は渋々と新武器の方を選びました。武器を作るところから始めないといけないので、既存の武器だとどうしても遅れを取ってしまいます。しかし新武器ならば全員スタートラインは同じですからね。
このように転職実装の告知に喜んでから一転、突然逆風を浴びせられたシールダー以外のナックラー達でしたが、全員が全員運営に膝を屈したわけではありませんでした。極少数、独自路線を走り始めた者達がいたのですが、これについてはまた別の機会に。
さて、そして時は経ってアップデート当日。
今か今かとその時を待ちわびていたプレイヤー達が、メンテナンスが明けた瞬間にゲーム内へ雪崩れ込みます。
私も早速ログインして、いつも使っている待ち合わせ場所に移動します。
MMOには『ch』というものがあります。混雑や狩場の奪い合いを避けるため、同じ世界をいくつか用意してプレイヤーが分散できるようにしているのです。
ラテールでは最も人が多いのが1ch、次いで2ch。あとはダンゴ状態です。
我々のギルドでは、何もなければ大体7chで活動していました。
その日も7chに入りましたが、明らかに人が多いです。いつもの3倍くらいは居そうです。
『ラテールってこんなにプレイヤーがいたのか』と驚きました。1chがどうなってるのか気になりましたが、見に行く勇気はさすがにありませんでした。
程なくして、いつもの四人が揃います。全員今日のために、レベル80は超えています。
転職をするには、本日追加された新マップ『アトランティス』に向かう必要があるとのことなので、移動を開始します。
せっかくの新マップもそこそこに、我々はその街にあるという転職できる場所へと急ぎます。
そして我々はワクワクしながら、転職を開始しました。
長くなったので三つに分けます。




