初心者と野良PT その1
MMOでは基本的に、一人よりもPTで狩りを行った方が効率がいいようになっています。ラテールでもそうでした。
基本的にはギルドメンバーと組むことが多いですが、ギルドにレベルの合う人がいなかったり、5人いるため1人あぶれてしまうなんてこともあります。
それでもPTで効率の良いレベリングがしたいという場合、PTメンバーは現地で調達しました。
自分の狩りたいモンスターをソロ狩りしている人を探し、『よかったらPTを組みませんか?』と話しかけるのです。
知らない人に突然話しかけるのは当初はハードルが高く感じましたが、皆さん気さくに応じてくれますし、すぐに何も思わなくなりました。
特にギルド実装前はこれが主流で、それまでに私が組んだPTは100%がこの方法でした。
初心者時代、こうして話しかけたり話しかけられたりして数多くの野良PTを組みましたので、その中で思い出深いものを三つほどご紹介したいと思います。
まず一人目。名前は覚えていませんが、仮に『ルーファス』さんとでもしておきましょう。
ルーファスさんとの出会いは確か私がラテールを始めた初日で、まだレベル10とかそこいらだったと思います。私がラテールで初めて組んだPTでした。
既に三人だったルーファスさんのPTに組み込まれる形で4人PTになり、そこから数十分ほどおしゃべりをしながらモンスターを倒しました。
そこですっかりルーファスさんと仲良くなり、狩りがひと段落してもPTを解消せずに二人でおしゃべりを続けました。
ルーファスさんはβテスターだったのかサブキャラだったのか、やけにラテールに詳しかったので色々教えてもらいました。
そして私は、彼に後々まで役立つ非常に大事な事を教わったのです。
ラテールには確実な金策として、『鉱石掘り』というものがあります。炭鉱というマップに行って、ツルハシで石を破壊することで手に入るアイテムをフリーマーケットで売るという方法です。当時始めたばかりでその金策すら知らなかった私は、それに必要なスキルの取り方から教わりました。
その後、取ったスキルを実際に使ってみようということで、二人で炭鉱へ行きました。
するとルーファスさんがいきなり上半身の防具を脱ぎ、インナーを露出させました。
そして私に言います。
「ほるときはこうするw」
一応言っておきますが、この時代は草を生やすのが一般的なマナーとして浸透していました。ルーファスさんは決して私を煽っているわけではありません。
何かと詳しいルーファスさんにそう言われ、私は深く考えずに上半身の防具を外しました。
次に、ルーファスさんはアイテムの分配設定を変更しました。
通常はPTを組んだ時、ドロップアイテムは自動で分配されます。
しかしルーファスさんはその設定を変え、ドロップしたアイテムがPT間で共有される状態にしたのです。
「ふたりでほるからw」
正直そうする意味は分かりませんでしたが、私はそういうものかと思ってこれを受け入れました。
そして私たちは、同じ部屋の中で分かれて鉱石を掘り始めました。
ラテールでは、アイテムにはレア度があります。そしてそれは、アイテム名の色で知ることができます。
ノーマルアイテムは白字、一番レア度の低いレアアイテムは緑字、二番目は水色になります。そして三番目は黄色、四番目は赤。五番目は特定の敵からしか出てこないユニーク装備で、色は濃い青色です。
そしてチャットログには、PTメンバーが手に入れたアイテムの情報も出てきます。普段手に入るアイテムは白字がほとんどなのに、炭鉱ではレアアイテムがじゃんじゃん出てきます。ログには緑色や水色の字が溢れ、嫌が応にもテンションがあがります。
すぐにノリノリでツルハシを振るい始めた私に、ルーファスさんが近づいてきました。
そして私が壊した石からドロップしたアイテム袋に手を伸ばし、こう言いました。
「おw」
次の瞬間、ログに新たなメッセージが出ました。
『ルーファス様が○○を獲得しました』。
黄色の字でした。
私は初めて見る黄色のアイテムを、ルーファスさんに横取りされてしまったのです。
当然私は断固抗議しました。
しかしルーファスさんは聞き入れてくれません。
「はやいものがちだからw」
そう言い残してPTを抜け、どこかへと去っていきました。
こうして私はルーファスさんから、非常に大事な事を教わりました。
『知らない人は信用してはならない』。
MMOでは特に重要な心構えですね。
もっとも、私はこの直前にルーファスさんから無課金ファッションの『アオザイ』を値切りに値切ってタダ同然で買い叩いているので、差し引きで言ったら黒字です。
長くなったので二つに分けます。




