表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート

ショートショート「透明人間」

作者: 夕凪 もぐら

 ちょっと聞いてくれるかな? これ見てよ。ジャジャーン。これなんだと思う? これは内緒の話なのだけれどさ、誰でも透明人間になれる透明薬なんだ。


 ああ、そうそう。いろいろあってさ、もう人と関わりたくないんだ。人間関係に疲れたんだよ。どいつもこいつも人を蹴落としたり、自分のことしか考えていなかったりでさ。


 無になりたい。誰にも視られたくない。誰からも気付かれることない無色透明になりたい。寧ろ透明人間になりたい。透明人間になって自由気ままに暮らしたい。


 そんなことを打ち明けたら、ドクターモグーラ博士が、実験途中の透明薬をくれたんだ。これを飲めば一時間だけ透明人間になれるらしいよ。凄いだろ?


 副作用は幾つかあって、ホクロから長い毛が生えるだとか、痔になるだとか、スキップができなくなるだとか、とても重篤で大変な副作用ばかりだけれど、透明人間になれるなら使ってみる価値はあるだろ?


 透明人間になってさ、誰からも視られないようになりたい。空気みたいに、原子みたいに、風みたいに。


 そして最終的にはさ、ぼくは女湯に飛び込みたいんだ。えっ? そんな顔するなよ。だって男のロマンだろ? おいおい、笑うなよ。こっちは真剣なんだって。ああそうさ。おっぱいが見たい。もう一度言おう。ぼくはおっぱいが見たいんだ。


 しかしだ。ここで一つだけ問題がある。ぼくは女湯に飛び込むとき、服を着ていくのであろうか? いかんせん透明薬を飲むタイプの古典的な透明人間では、流石に服までは透明にできないんじゃないだろうか。服着てたら透明の意味なくね? 普通に考えれば一番初めに辿り着く結論であり、初めにぶち当たる壁なのだけれど、今の今まで考えても結局答は出せなかったんだ。


 でもさ、きみと話していたら、なんだか答が見えてきた気がするよ。きみは不思議な人だなぁ。本当に大切なものって、案外初めからもっているものだよね。臆病な獣の勇気しかり、ブリキの木こりの心しかり、スケアクロウの知恵しかり、ドロシーの靴しかり。あとは勇気を出して踵を三回鳴らすだけ。






 ってことで、女湯へは全裸で飛び込もうと思う。この際だから透明薬は飲まずに行くよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  Oh!透明人間(古)  彼は伝説の勇者ですね。  私はとりあえず、服を着て透明になります。  
[一言] いや、アカンやろ(笑)。
[一言] 人間関係に疲れが出たって?いや、あなたこんな赤裸々な願望打ち明けられる相手がいるじゃない。というツッコミは、透明人間になって女湯に飛び込むという盛大かつ滑稽で中規模な計画に飲まれていくんだな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ