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魔女の子どもはオトコの娘 --Son of a Witch is Otokonoko--  作者: いちごフィルム
第1章 世界の真ん中、ぼくも真ん中
3/3

【編集中】預言を回避しましょう

「もうぅ……やめてください……」


僕はか弱い声をひねり出すようにあげた。

脚も腕も空間上に縛られ、その場から逃げることはできない。

まさにピンチである。

足掻くことも大声で叫ぶこともできない。助けが来るアテもない。


ぬるりとした空気にスカートの裾から腰までを触られ、服を捲し上げられる。と同時に腕をちょうどバンザイの形にさせられ、僕が着ていた服はひらひらと僕の身体を通り、そしてひんやりしてそうな大理石の上に落ちた。

すると今度はまた別な服が僕を食うように襲い掛かってきた。

今度の服はゴシック調だった。白をベースにした服だったが、ところどころキュビスムを思わせる黒の模様が幾何学的に組み合わさり、まるでピアノの鍵盤を思わせるようなデザインだ。

正直いってこの服はかなり好みだ。


――だが。

なぜ自分が着ているのか、着させられているのか。

違う、違うのだ。確かにこの服のデザインはたいへん気に入っているし好きなのだ。

だが、好きだからといって即ち着たいということではない。

ほら、わかるだろう、女性のちょっとした仕草に萌えることはあっても、自分がその仕草で誰かを萌えさせようなんて思わないじゃないか。


なんてどこにもいない誰かに釈明をしていると、向こうの方で女二人が僕を見てあれは少し丈が長いだの顔に合ってないだの言っている。

女三人寄れば姦しいなんて言ったが、二人でも十分にやかましいのである。


まあ言ってみれば僕は母さんとロスキ先生の魔法で無理やり、強制的に、許諾もなく魔法により女装をさせられていた。

なんたる非道な行いであるか。うら若き男子のジェンダー観はほったらかしである。




預言。

それは200年程前にこの魔法学校の資料館で偶然発見された魔導書に記されているそうだ。

1600年あたりから2600年までの魔法界についてが書かれているが、その預言のうち20%は当たっている。といっても預言全てが悪い預言ばかりではないのだ。新魔法の開発、偉大なる魔法使いの誕生、使い魔の進化など……

そして預言の残り8割は外れている、いや正確には避けようとした努力が実ったというべきである。

魔法学園の経営難による破綻、魔法界崩壊シナリオなど多岐にわたる。

現実が存在しているからこそ預言による虚構を止めることができるのか、預言による虚構のおかげで現実が存在しているのか。

卵が先か鶏が先なのか、どちらが原因でどちらが結果なのか、この預言書に限ってはその双方の可能性が同時に存在している。


そして僕が魔法界へと来てしまったのも、女性の服を着てしまっているのもすべてそのシュレディンガー的な預言書によるものだ。



預言によると1年後、魔法世界は半分が滅びるらしい。

なんて、そんな突飛なことを急に僕は言われたのだが、いきなり突飛な世界に連れてこられた人間がそんな話を「ふーん、へえそうですか」と聞けるものか。

だがまた女2人にやいやい言われるのも癪なので適度で心地よい相槌だけは打っておいた。


この預言の回避策は2つ。

一つ、いっそのこと前もって世界を崩壊させておく。そうすれば1年後に世界が惨劇を喰らうことはないかわりに魔法世界は少し早めの滅亡を迎える。

もう一つ、原因を取り除くこと。預言を回避する成功確率的にはこちらのほうが難しいらしい。


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