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ヴィレッジ・トゥ・ラヴシックモンスター

作者: ステツイ

自分がツイキャスをしている際に他の作家さんとお話ししていてキーワード小説なるものを書こう。となり、今回の小説を書かせて頂きました。キーワードは『妖怪』『病気』『恋愛』の三つです。


山の奥地にある村。

その村では成人したばかりの狩人は秘境へ入り、家族全員分の食糧を確保してくる伝統しきたりがあった。

この男も例外ではなく、秘境へ向かうためにふもとを降りている。

そして今年、成人した狩人は一人きり。

心細さを背中に漂わせながらも男は颯爽と森林を駆ける。


「いくら、ひとりつってもここいらは慣れたもんだ。ガキん頃から遊んでんだ」

自分を奮い立たせるように発言したのも寂しさの表れだろう。

村の狩人たちは森林地帯で狩りをするのが主流だ。

しかし、この男は違った。

わざと洞窟を選んだのだ。

薄暗く、寒々としていて動物なんかが住むとは考えがたい洞窟を選んだのだ。

男は自分自身を表現するために人と違う事ばかりおこなってきた。

そうしたアイデンティティーは村人からは祝福される。

『らしさ』なんて言えば聞こえはいいが、現代の日本では唾棄だきされるだろう。


男が洞窟に近づくにつれ、周りの木々がざわめいて不信感をあおる。

ざわざわとがなりたてる音に怯えたが、それでも男は走り続けた。

速度は維持したまま、だんだんと慣れぬ景色に目を奪われながら。


男は疲弊し休息を取ろうと立ち止まり、腰に下げていた革製の水筒を手繰り寄せた。

「はぁっ…はぁっ…」

ゴクリゴクリと喉を鳴らしながら水を浴びるように飲む。

火照った体に、細胞一つ一つに、水が沁みわたる。

男は息が整ってきたのを確認すると洞窟へ向け、再び走り始めた。


本来、どれだけ時間のかかっても良い狩りだが男はまたしても違った。

平均3日かかる狩りを1日かからずに帰ってくる。

それが今回の目標だそうだ。

男は走っている道中何匹かのウサギやイノシシを確認した。

しかし男は目の前のごちそうに目もくれずにただただ、洞窟を目指した。


男がふと後方を確認すると、既に村が米粒ほどの大きさに見えた。

男は村にいる狩人達の中でも足が一番速いので、他人には真似の出来ない事だろうと考え、安堵していた。

ようやく、洞窟につくと最初から入らずにまず周りを捜索した。


数歩先に見えた松の木を石で叩き、松の皮を剥いで落ちていた枯れ木の枝にくくり付けた。

その後、持ってきていた布きれを棒に巻きつけて、先程剥いだ皮の後になすり付けた。

樹液が棒切れの布にじわりと染みつきしっかり濡れたことを確認すると原始的な方法で火を焚き始めた。


村で昔から慣れしたしまれていた方法という事もあり、1分かからずで火が付いた。

男は即席で松明を作り上げたのである。

洞窟内は暗いだろうから明かりが必要だと思っていたのだろう。



そして男は洞窟に入っていった。



洞窟内はやはり暗く、明かりを作ったのは正解だった。

と言っても目先数メートルしか照らされないので心細いといったところか。

「へへ。無いよりマシさ」

さっき何枚か剥いでおいた松の皮と布を組み合わせた目印を点々と置いていく。

ぴちょん。

男はどこからか水の滴る音を感じ取った。

休んだ際に空になった水筒が重くできると思い、音のする方へと歩いて行った。


しばらく歩いていると地下水が湧いている所を発見した。

男はまず、水が飲めるかどうか確認した後、水筒に水を汲んだ。

「おめぇが腹いっぱいになっても、こっちにゃ家族が腹減らして待ってんだ」

コツンと水筒にデコピンをする。

ざわり。

体がぶるりと震えた。

男は嫌な予感を感じとり、恐る恐る後ろをゆっくり振り返る。


すると、暗闇にポツリと2点光っているモノを目視した。


妖艶な煌めきに心奪われてしまい、ふと我に返ると既に光は無くなっていた。

「もしかして熊か?イノシシか?」

男は洞窟に入ってからようやく獲物らしきものを確認し、心躍らせ獲物がいた方向へ歩いて行った。


洞窟の奥地へと進んでいくと行き止まりにあたった。

「あれ?確かにこっちに逃げたと思うんだけどな」

それもそのはず、道中分かれ道もなく一方通行だったので男を撒くことはできないのだ。

もしかしたら幻影だったのかもしれないと肩を落とし、きびすを返すとまた光があった。


ギロリ、ギロリ。


今度は4つに増えていた。

男は松明を落とし、背中の弓矢に手を伸ばす。

しかし、4つの光はだんだんと高くなっていきます。

その高さが2メートルになった頃、光は近づいてきます。

そして大きな影はゆっくりと近づいてきます。


薄暗い洞窟の戻り道から現れたのは、美しい少女たち。


しかし、奇形であった。


下半身が蛇のようになっていた。


いわゆる、蛇女だった。


男は腰を抜かして一言も話せません。

しかし、2匹の蛇の少女たちはこちらを見たまま動きません。

先に口を開いたのは、紅い目を持った赤髪の少女。

「あなた人間?どうしてこんなところに?」

次に、碧い目を持った青髪の少女が口を開く。

「やめようよお姉ちゃん。お母さんも言ってたでしょ?人間に関わるなって・・・」

「お母さんは!!!…もういないでしょ・・・」

青の蛇に赤の蛇が噛みつくように反論する。

しかし、声を荒げたのは最初だけで、声はだんだんと尻すぼみしていった。


青の子がそっか、と申し訳なそうにしたが横目に男をちらりちらりと見ていた。

「気になる?私も。だから…二人で…どう?」

赤の子は男を舌擦りしながら見ていた。

男は喰われると思い、砕けた腰を治すのに必死でした。

ですが、目の前の妖怪を見れば見るほど、腰がなよなよとへたって行きました。

「お姉ちゃん。いつも独り占めしようとして逃すんだから、今回は私が最初ね?」

青の子もまた下で唇をなめ、男へ近づきます。


「やめてくれ!俺はまだ死にたくない。嫁も居ないんだ!勘弁を!」

「どうか私達を救ってください!」


男と青の幼女は声が重なる。

男は救うという言葉で頭が混乱した。

むしろ自分を助けて欲しい、それが願いなのだから。


「と言ってもわかりませんよね・・・私たちはとある病気を患っていまして・・・」

男はまた混乱します。

妖怪でも病気になるのかと

「私たち二人とも人間と恋愛して・・・その・・・子どもを作らないといけなくて・・・」

それに私たちは発情期に差し掛かっていて病気のまわりも早いの。

と、赤の子が付け加える。

男はそう言われ二人の容姿を再確認する。

「綺麗だ…」

そのままの感想をふと零してしまった。

なめらかなきめ細かい肌。

短くも美しい2色の髪。

二人の幼女はたちまち紅潮した。

男も自分の放った言葉が戻ってくると恥ずかしい気持ちになりました。


「俺も男だ。女子供の頼みも聞いてやれないなんて男がすたる。俺に任せろ!」

ここでも他人との違いを見せる男。

普通の人ならば、怖くて逃げるが男は頼みを聞こうと立ち上がりました。

幼女二人も喜んで男に巻き付きます。

「ありがとうございます!もう何百年も人間に出会わなくて・・・」

男はあぁ、妖怪だから長生きなんだなと理解すると、青の子が唇を奪います。

「…痛くしてしまったらごめんなさい」

蛇の幼女が頬を染めています。

男も人間の女子と行為したことがなく、自身は無かったがリードしてもらえそうなので甘んじた。

「それじゃあ・・・」









「いただきます」









男は二度と村に帰らなかったという。

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