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影伐の魔女と国滅の暴龍  作者: 三月語
序章 国の興亡
1/1

prologue 王国の興亡と国滅の暴龍

あらすじの大半を占める、国の興亡とその要因となった少年の過去話です。


中盤から残酷描写ありますので、閲覧注意です。

世界最大の国、アルマーナ王国。


かつてこの国は名の違う国で、国王による暴政によって疲弊しきっていた。


その国の名は・・・セルティア。他国にも名の知れるその暴政は、目を背けたくなるようなものだった。


















































その国が滅び、民は救われ、アルマーナ王国が建国されたその陰には、龍を宿した1人の小さな英雄がいた。
































アルマーナは生まれて8年目。そんな国で既に子どもにも語り継がれている・・・そんな小さな英雄の話。
































セルティアの国王、セルティア8世は国民に対しあまりに酷い政治を行っていた。国税は高く、町には裕福な者はいない。国王に対する怨嗟の声は耳を塞いでも聞こえてくるようなもの。


そんな状態のセルティアの悩みの種は2つあった。
































1つは・・・怨嗟の声につられてきているのであろう、『シャドウ』と呼ばれる存在。『シャドウ』は何所から、何故発生し、何を目的としているのか・・・そのすべてが不明。分かっていることは・・・襲われ死した人間が『シャドウ』になる、という事だけ。


もう1つは・・・国王の望みが酒池肉林であるという事、だ。

































『シャドウ』に対抗できるのは、魔術を使用できるものだけ。そして魔術を使用できるのは・・・女性だけ。所謂『魔女』と呼ばれるものだけだ。


しかし、その魔女達をセルティア8世は自分の手元に置いてしまい、国防を疎かにしていた。前線で戦うのは・・・言ってしまえば『国王の気に召さなかった魔女』と『国王の相手をしなかった魔女』。
































そんな状況に終わりが訪れたのは・・・セルティアが滅ぶその日だった。
































「いやー、あいっかわらず国民の目が死んでるわこの国」

「・・・さすがに物好きも程がある」



セルティアの中心街、そこに姉弟のような2人組がいた。片やまだ若い女性、片や齢10にも満たないであろう男の子。通り歩きながら女性は思わず呟いていた。



「前にも旅の関係で来たことあるけどその時よりみんな暗い!どんだけ酷い政治してんだか」

「メリアが言うほどだから余程酷いんだろうな」

「・・・うん、ちょっと後でその面ひっぱたくからね?エ「メルキオット。アンタが言い出した事くらい守って。んでこれでチャラ」・・・うぐぐ」



女性・・・メリアはメルキオットと自ら名乗るように言った男の子に言われ、口を閉ざした。



「それで今日はどうする気?」

「まずは今晩の宿を見つけないとねー。いい加減野宿も飽きたし」

「俺は野宿でもいいけど」

「私が良くない!起きたら腕が痺れてるのはもう嫌なんだよー!!」



メリアがうがーと叫んだが、メルキオットは見向きする必要を感じない、という様子で歩いていた。



「というか金あるの?2人も宿泊できるような」

「ある、うん。いつもよりまともなご飯も食べれるし」

「ならいいんだけど。というか何泊する気?」

「4日。なんか観光できたらだけど」
































その日の夕方、宿の大広間。メリアとメルキオットは夕食中だった。



「お、おい!大変なことになった!」



1人の男が大広間に入り込んできた。町の飲食店の1つでもあるそこには町の人もいた。



「おい、どうした?またあの愚王が何かしでかしたか?」

「何かなんてとんでもねぇ、あの野郎とんでもないことやりやがった!!」



大広間がざわつく。メリアは何が起きたのか気になってフォークを止めた。メルキオットは意にも介さない。



「あ、アルマーナ様の1人娘を連れ去りやがった!!」

「な、なんだと!?」

「アルマーナ様の・・・イリューナ嬢か!糞野郎、絶対許せねぇ!」



メリアにはこの連れ去り事件が一体民に何の混乱を齎しているのかが分からないでいた。



「・・・」



メルキオットはヒートアップする民衆を目の隅に置くだけだった。が、ある一言がきっかけで反応した。



「もう我慢ならねぇ!おい、確か外れにクーデター軍の首領がいたよな!?」

「だな、イリューナ嬢に手ぇ出してやがったらただじゃおかねぇ!あの愚王絶対落とすぞ!」



メルキオットの耳に入ってくる、クーデターの言葉。同時にイリューナという存在が如何に愛されているかが分かる発言・・・思わず席を立っていた。



「め、メルキオット?参加するの?」

「参加じゃない・・・俺が王を殺す」

「・・・いやー、さすがに国民じゃない人間が参加するのってどうだと思うけどさ・・・」

「愚王なんだろ?いる必要ない」



メリアは否定気味に濁した言葉を告げるが、メルキオットに届かない。呆然とするメリアを他所にメルキオットは男たちの元へと歩いて行った。



「あのさ」

「あ?・・・なんだ子どもか。気にすんな、坊主にゃ関係ないから」

「俺が王を殺してそのイリューナって人を助けるって言ったら?」



メルキオットのこの一言に場がざわついた。まだ幼さのある子どもが殺す、という言葉を使っていればそうもなる。だが、メルキオットは言葉を続けた。



「大丈夫、俺ならやれる。町には被害を出さない。・・・その愚王、イリューナって人以外にも連れ去っているんでしょ?」

「あ、ああ・・・」

「全員は助けられないかもしれない。それでもいいんだったら・・・やるよ。明後日の朝には全て終わらせるから」



その場にいた者全てがざわついた・・・が、1人の男がメルキオットに歩み寄った。



「ほ、本当にやってくれるんだな!?」

「うん」



メルキオットが頷いたその時、大広間が歓声に包まれた。



「・・・エスカ、ホントにやるの?さすがに1人じゃ『咆哮ロア』でも無理なんじゃ」

「できるかできないかじゃない、やるかやらないか。ただそれだけ」

「・・・もう、私は何も関与しないからね!」



メルキオット・・・正しくはエスカの愛称を持つ少年、エルセティカ・ゼファー・・・は自分の左腕を見て、城のある方を見た。
































「・・・さて、町の人から城の見取り図をもらったし。・・・イリューナって人がいるとしたら地下の牢獄かこの施術室か・・・先に施術室へ行った方がいいのかもしれない」



翌日の夜、エスカは城の裏庭に既に入り込んでいた。見取り図から楽に入れそうなのは裏庭だと書かれており、その通りに楽に侵入できた。



「最初の目標はイリューナという人を救出すること。絵の上手い人から似顔絵をもらってるから・・・俺と同い年かな」



絵に描かれているのは自分と同い年かそれより幼い感じの女の子。その絵を懐にしまい、壁に対峙した。



「・・・さて、と。愚王退治とお姫様の救出作戦は・・・派手な祝砲から始めるとするか、な!」



ぐっと腰を下げて拳を引いて・・・それを突きだしたその瞬間、辺り一面に轟音が響き渡った。ドカン、とかバゴォン、なんてものは生易しい。様々な爆音を組み合わせ、それを何十倍にも増幅した・・・擬音にするには到底難しい・・・そんな音が響き渡った。
































その音が響いた瞬間・・・国王の寝室では・・・



「な、な、何じゃ!?何が、何が起きた!?誰か、誰か!」



眠っていた国王、セルティア8世はその轟音でベッドから転がり落ち、周りを見回して大声で人を呼んだ。
































そして同刻別の場所・・・



「何だ?誰かが大砲を暴発させたか?」

「知らねぇ。おら、さっさと歩け!・・・ったく、このガキが愚王のお気に入りで烙印を押されてなかったら好きにやれたのによ」



男2人の中央少し遅れた位置に少女がいた。虚ろな目で服も粗末。声を発することもなくただただ歩いていた。否、歩かされていたと言う方が正しいか。



「しかしこのガキも可愛そうに。あのアルマーナ伯の一人娘だろ?国王の贄に選ばれて奴隷の証打たれてさ」

「それで今日は狂った学者共に『施術』されるんだろ?4つの薬すべて打たれちまったらもう戻れなくなるって聞いたけど本当か?」

「地下の牢獄。奥の方から女の声が聞こえたろ?あれ全員、快楽狂いにされた挙句愚王に捨てられたんだとよ」

「酷ぇや」
































「いたぞ!!」

「中庭に逃げたぞ、追え!」



兵士達はエスカを追って中庭に向かう。・・・が、実はというと・・・



「ザマねぇなあの兵士共。俺の影だけ追いかけていってさ。さてと、まずは施術室か」



エスカは見取り図を見る。が・・・



「位置はこのまま右行きゃいいんだけど階段面倒だし・・・さぁどうするか」



ふと見取り図と天井を見る。そして自分の左腕を見た瞬間、エスカにある考えが浮かんだ。



「めんどいなら破壊してきゃいいじゃんか。そうだ、別に階段上る必要ないんだわ。・・・せぇ、のっ!」



エスカの左腕が黒く染まったと同時に龍が浮かぶ。その腕を天井に向ければ縦に伸びる傷がある左目が開き、人のものとは思えない漆黒の瞳が見える。



「全てを喰らえ黒き暴龍、己が前に映るは己が贄、その贄喰らうは漆黒の《砲弾だんがん》たれ、『黒暴龍の砲撃デモンズバハムート・ブラスト』!」



砲撃は天井を綺麗に撃ち抜き、丸く大きい穴が開いた。音こそ大きく響いたものの、逃げた分身も適当に暴れまわっていたため、エスカがやったとは思わなかった。



「よし、此処から一気に近道・・・っと!」



エスカはその穴を抜けて上へ奥へと進んでいった。

































「王も物好きですな」

「こんな幼気な少女に投薬して自分好みにするとは・・・しかし我らとしてみれば好都合ですぞ?」



2人の白衣の男が少女が寝かされている台の横で準備を進めていた。その準備は、まさに会話の内容である少女への投薬である。


台の上に横たわる少女に、動く気配はない。



(・・・私、もうお父様の元へ帰ることはできないのですね・・・)



少女は歪む視界と動かせない身体に、二度と父親の元へと帰れないと思っていた。体が麻痺し、身に纏うものは何もないのに何も感じない。そんな状態でただ思うのは助けでも祈りでもなく、ただただ謝罪だけだった。



「さて、残すは最後の1本。これでこの少女も王の玩具となると思うと忍びないが・・・研究のためだ、悪く思うなよ」



男は薬瓶を手に近づいてくる。既に針は少女の身体に突き刺している。その光景に少女は目を閉じたくなるが、麻痺した体は言う事を聞かない。もうだめだ、と少女が諦めをつけたその瞬間、部屋の壁が盛大に吹き飛んだ。



「な、なんだぁ!?」



1人何事かと轟音の元を見れば、まず見えたのは禍々しい姿の龍の首。徐々に見えてきたのはその龍の首を左腕に生やした幼い少年だった。もう1人を探せば、そのもう1人は壁にめり込むような形で死んでいた・・・



「・・・少し手遅れ、だったか?」

「な、何者かね君は!此処は神聖な場所だぞ!?」

「何が神聖だ何が。人体実験当然の、人を人と思わない・・・最低の行為を平気でやれる部屋だろ」



少年、エスカは男に吐き捨てるように言う。男はまともに言い返せなくなって口を閉ざす。



「・・・まあいいや。愚王の元には愚者が集う・・・まさにそれを体現したような下種野郎には・・・生きる資格もない!」

「ひ、ひぃっ!?や、やめてくれ、命だけは!殺さないでくれ!!た、たす」



一瞬。命乞いをする男の半身を異形の龍が喰らった。最期の最期まで言葉を告げられなかった男の残った半身は自身の血で塗れた床にどちゃ、と倒れ伏した。



「・・・俺と同い年、か。見た限り・・・身体は麻痺して4本中3本は投薬済み・・・最後の1本で止めだったんだろうな、そう考えると助けられたと見た方がいいか。・・・ふっ!」



少女の腹に右手を置き、強く息を吐くエスカ。一瞬だけ少女の身体が跳ねるが、少女が身体の違和感を感じなくなったのも同時だった。



「何なのかよく分かんないけど俺の力で解毒・・・じゃないな、何て言えばいいんだ?・・・とにかくやれる範囲はやっておいた。もう首までは動かせると思う」



エスカの言う通り、少女の身体は首までが動かせるようになっていた。



「あ、の・・・あなた、は・・・」

「・・・誰だっていいだろ。ただ愚王を殺しに来た化物とだけ思ってくれればそれでいい」



エスカは名も名乗らず持っていた紙を広げた。そして少女と紙を見比べて確認。



「・・・おし、イリューナ保護完了。少ししたら戻ってくる、服探して隠れてろ。何か聞こえてもひたすら隠れてろ」

「は、は、い」



エスカは少女・・・イリューナが隠れるのを見届ける間もなく施術室を出た。



「・・・ちっ、やっぱ燃費が悪い。こっちをしばらく使うしかない、か」



部屋を出て少ししたところで、エスカは左手の黒龍を鎮め、腰に差した小刀を抜いた。



「・・・殺す必要があるのはさっきの研究者と国王、後は・・・雑でいいか。殺さなきゃ」

































エスカが去って、1人残されたイリューナ。身体の麻痺が抜けてからすぐ、彼女は近くのカーテンを外して身に纏う。



「・・・あの御方・・・やり残したことがあるとおっしゃってましたが・・・何だったのでしょうか・・・」



隠れられる場所を、と思いイリューナは近くを見回した。死体がすぐ傍にある為にこの部屋にはいたくない。だが隠れなければやってきた兵士に再び投獄されるかもしれない・・・。最悪彼と一緒に来た反乱軍に殺されることも考えられる・・・。考え付いたのは近くにあった箪笥だった。






数刻後、イリューナの元にセルティア8世の断末魔が聞こえてきたのは言うまでもない・・・

































「早う、早うせよ!賊徒の居場所もまだ分からぬのか!」

「も、申し訳ありません!何分相手は子供で」



国王の間、セルティア8世は苛立ちを隠せない有様で兵士に吠えていた。あの爆音からまだ一刻も経っていないが、自分を殺しに来た賊が未だに捕まっていないという状態に気が気でなかった。



「急げ!余が殺されるようであってはならぬのだぞ!?」

「わ、分かりました!!」



兵士が敬礼し国王の間を出た直後だった。



「ぎゃあああぁっ!?」



来た道を引き返すが如く、先程出て行った兵士が吹き飛んで戻ってきた。



「な、何ぞ!?」

「よぉ、ようやく見つけたぜ愚王」

「ひぃっ!?」



国王が聞いたのは、床と靴が擦れ合うザッ、ザッ、という音と、少年の声だった。



「あんたの悪政、あまりに酷いんだってな」

「な、何者か貴様!余になんて口を利くか!」

「黙れ愚王。あんたに聞かす丁寧な言葉なんてない。あんたにはこれで十分だ。同時にアンタに名乗る名なんてない」

「ぐっ・・・」



セルティア8世はエスカに口を開くが、エスカはバッサリ言葉で切り捨てる。



「あんたは何も知らないだろうけど、城下町じゃあんたに対して恨んでる奴らがたくさんいるんだぜ?」

「知らぬわ!愚民どもの声など聴くに堪えぬ!」

「おまけにあんた、国の魔女全てを自分のものにしようとして、気に入らない魔女は実力有る無し関係なく戦いに出して気に入った魔女は自分のもとにおいて。シャドウ討伐もままならないって話だぜ?」

「ふん」



知らぬ存ぜぬを繰り返すセルティア8世に、エスカは溜息を吐くだけだった。



「余の夢を果たして何が悪い?」

「悪いとかどうとかそういう問題じゃねえんだよ」



エスカはセルティア8世の問いに『問題はそこじゃない』と返す。



「あんたの何が悪いのかは・・・自分の思うがまま、自分の欲望にただただ従うだけで、他者の何一つすら顧みない・・・そのあんたの生き様なんだよ!何が欲望だ、何が夢だ!一国を統べる王だろあんたは!自分のこと考える以前に国民のことを考えろよ!」

「なっ・・・き、貴様、余の夢を愚と言うか!」

「ああ愚だね、いや、愚というには愚に失礼なほどだよ!」



エスカの言い返しに、セルティア8世はついに我慢の限界となった。



「き、貴様ぁ!言わせておけば余を愚弄しおって!誰の手も借りぬ、余自ら貴様を処刑してくれるわ!!」



王は腰の剣を抜いてエスカに切りかかる。煌びやかな飾りをつけたそれはエスカに向けて振り下ろされたが・・・



「遅ぇよ愚王」

「な、に、ぃいっ!?」



振り下ろしたその瞬間にエスカは後ろにいた。同時に王の片腕が落ちた。



「ぎゃああぁあああああぁぁああああっ!?!?い、痛い!?痛すぎる!?な、何が!」

「本当なら国民・・・いや、あんたに牙を向いた奴らにあんたの首を刎ねさせるのが常識なんだがな。さすがにそれを待つわけにもいかない。約束も次の朝までに決着をつける、だから」



エスカはそう言うと小刀を納めた。そして左腕の力を抜き、口を開いた。



は永劫闇に彷徨う神々を屠りし暴龍なり・・・。贄其は我が眼前の敵也かたきなり・・・其の血肉悉く喰らわんが為、其の姿此処に具現せよ!『黒暴龍の咆哮デモンズバハムート・ロア』!!」



国王が見たのは、少年の左腕が突如黒き龍へと姿を変えるその瞬間だった。龍は腕の動きとは全く関係ない動きを見せ、国王を品定めするかのように唸った。



「よ、よせ!な、何が目的だ、金か!?財宝か!?それなら幾らでもくれてやる!だから余を殺すな!」

「俺の目的は・・・あんたの命だよ!」

「ひいぃっ!だ、誰か、誰か!!」



国王は腰が抜けていたが、床を這ってでも逃げようとした。しかしエスカがそれを逃すわけがない。



「逃がすか・・・其の贄喰らえ、暴龍バハムートぉ!!」



《グオオオォォォォ!》・・・と吠え、国王に迫る黒暴龍。這う這うの体で逃げる国王を目に捉え・・・



「あ、が、あぁぁあぁぁああああぁぁああああぁぁぁ!?」



胴体を食いちぎらんとばかりに噛みついた。骨まで砕かんとするその力に、国王は悲鳴を上げた。



「余、は、死にとう、ない・・・!余の、夢、酒池、肉林、がぁ・・・世の、女を・・・余の・・・もの、に・・・」

「くどい、もうあんたの言葉は・・・聞きたくないんでね!」



その瞬間、王の喉から絞り出したような悲鳴が発せられたと同時に、肉を千切り、骨を砕く・・・言ってしまえば人体を崩壊させる・・・そんな音が響き渡った。



「・・・ふぅ、首と腕が残ったようだな。腕は地下牢獄の女たちを何とかするための材料になるだろ。首は反乱軍にくれてやるか」



エスカは王の首を布で包み、持ってその場を後にした。

































約束通りイリューナの救出と王殺しを果たしたエスカは、メルキオットの名で反乱軍・・・いや、国民全てから英雄として扱われた。



「いや、ほんとにやるなんて」

「愚王が雑魚だったから余裕だった。剣の手練れだったらもうちょっと苦戦したか・・・最悪俺が死んでた」

「・・・けど、本当に無事でよかった」



メリアはエスカを抱きしめ無事を確認した。エスカはそれを手で押し離し、口を開いた。



「・・・ごめんメリア、昨日夜からずっと起きっぱなしだから少し寝たい」

「あ、そ、そっか。ごめんね。宿の2階借りれてるからそこで」

「了解」



エスカはメリアと別れ、2階へ1人向かった。

































それが、エスカとメリアが分かれる前、最後に交わした会話だった。



































































それから8年後。



「・・・メリアの奴、一体どこでどうやって俺の情報掴んだんだ?」



アルマーナの城下町を手紙片手に歩く男の姿があった。男は手紙の主、メリアに対して愚痴を漏らしていた。



「・・・しかも目的地は魔術女学院・・・。あれか?あの時何も言わずに消えた俺に対する復讐か?」



立ち止まって自分の頭をバリバリと掻く男。辺りをキョロキョロ見回し目的地を探す。



「・・・まあいい、面倒だ。とっとと行って話つけてくればいいか。終わったら久しぶりにここの観光して去りゃいいだけの話だ」



男・・・エルセティカ・ゼファーは目的地である魔術女学院へ歩き出した。

次回は主人公・エルセティカが呼びたされた場所へと向かいます。


そこに待ち受けるものとは?それは次回にて。

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