主人公1,野球そしてキャラ過半数が裏設定持ち
改行がだるい。
後、キャラとかそこらへんが嫌とかいう輩は論外。
元々趣味であるが故、読み手(己以外)は優先しない。
野球へのツッコミはなしだ。
此処は、例の城内。午前9時、彼らは起床した。
「よぅ、ぐっすりと眠れたか?」
「・・何で、こんなところで・・」
川田は痺れた脚を叩きながら、鞘を持つ方の手に力をいれて立ち上がる。
「起きなかったフィネーが悪い」
「う・・」
川田は浄化で、身体を綺麗にする。
フィネーは、ベッドから身体を起こし座った。
川田は綺麗に洗ったガラスのコップを濯ぎ、其処に緑茶を淹れ彼女に渡す。
「ほれ」
「あ、ありがとう・・。」
川田は部屋の窓を開ける。水いろのカーテンが、風によりたなびく。
彼女の身体が震えたのを見た川田は声をかける。
「暖かいミルクココアにしようか?」
「ううん、いいよ」
「そうか」
緑茶を飲み終わった彼女は、コップを小さな丸机に置く。
川田は、コップを取り洗う。而して、濯ぎ流しタオルで拭いて乾燥させる。
長く思える時間が過ぎた。
「フィネー、どうかしたか?」
「え?」
「え?じゃねぇよ。用が済んだら、帰るこった。」
「うん、そうだね・・」
無口すぎるため、彼は無視する方針にした。
彼は外に出る用意をする。
「何処行くの?」
「朝食を奪ってくる。待っとけよ」
「ま、待って!」
「ん?」
「私も行く!」
「は?」
「拒否権は無いから!」
「意味不明~」
やはり、無視は出来なかった。何故なら、身内じゃないから。
それに伴い、彼は彼女に、頭の回転が鈍って居やがると思った。
共に外に出て、食堂に来た。食堂のおばさんが、気を使ってくれたおかげで、彼らの朝食はまだ残っていた。彼らは、朝食を食べた。
「やっと、頭が回るようになったか」
「元から回ってるよ」
「そうかい」
其処に、神樹が来た。
「あ、おはようございます」
「遅かったな。そこでだ。
その遅刻、寝坊の罰として明日の野球・・お前たちも絶対出てもらう」
川田は大ブーイング。
しかし、もうすでに組まれている亊を暴露していたため、今日参加となった。
「しょうがない・・」
・・その日の昼、町の外にある空き地で練習しようと神樹に誘われた川田。
フィネーも誘われている。
川田は、バットを持ちフィネーがキャッチャー(これよりCと省略する)
神樹はピッチャー(これよりPに)となる。
バッター(BH)の川田は、野球部に握り方とかを教えてもらったため、少しは出来る。それでも、軟式野球なんだが・・。
「行くぞ」
「はい!」
神樹は、投げる。
シュッ
「は?」
バン!と音がする。いつの間にか、網にかかっていた。
「・・・(見えないんですけど!?)」
「弱い、もう一度だ」
しかし、何度やっても無理だった。
「ちょ、無理ゲー(泣)」
「泣くな!男だろ!」
「そうですよ!」
川田はあの手袋を履いた。
理由、それは・・可能性を作るということだ。
「うおおおお!」
ガキン!
バットにボールが当たった。しかし、バットはへし折られていた。
「いや、ちょ・・」
「早くしろ!時間がない!」
「無理ですよ!」
「大丈夫だ。当てる練習だけをすればいい。
明日使用するバットは、高重力力場で原子、電子操作し創造したものを用意させる」
無駄にオーバーだな!
明日を迎えた・・。
時がすぎているが、何事も起きなかったのでスルーさせてもらう。
チームA&C(大人と子供)・・・福沢諭吉、野口英世、夏目漱石、恵美押勝、
ブルータス(女)、神樹、山下、レン、藤原重信、フィネー、川田、田中栄一。
チームMOB・・・総勢十二名(MOBですから)。
審判員、劉備玄徳。
色々突っ込みがいのあるメンツだな!蜀王、何してんだ!?
ブルータスが女だと。有り得ぬ!
レンと重信、山下さんは絶対神樹さんのコネだろ!
「おーい、Q太郎ーお前が第3打席だ。
孫文・・じゃなくて、存分に打って逝ってこい」
「ああ、あと俺は九太郎だ。」
「・・・(発音行程が完全に、違う意味となっているのを突っ込んでいいのだろうか?)」
福沢が夏目に、連絡している最中、恵美押勝はツッコミ精神に抗[あらが]う。
閑話休題
一応、自分たちは、野球団員と面識があっても自己紹介をする。
「ぼ、僕は、川田翔太です!なるべく、当てるのでよろしくお願いします!」
緊張しすぎた!肩の力を抜いて、一旦深呼吸をしよう、うん。
「審判員の劉備だ・・・。理由は聴かないでくれ・・。」
なんとなく分かっている皆さん。
自分は、城にきて日が浅いので政務でお疲れなのだろうと思った。
「僕は福沢諭吉だ。・・・これは、コードネームなので、きにしないように。」
こいつも結構緊張しているな。しかし、右手のポケットの中で何やってんだ?
「俺は山下さ。皆知っているだろうけど、よろしく!」
うん、明るいね。
生真面目ばかり集まる野郎共の中では、一番居て欲しい存在の彼。
病院送りにはならないでほしいなー。
「俺は恵美押勝だ!よろしくな!」
お、明るい。しかし、イケメンしね。
だが、明るいので、たとえとして懲役五百年を懲役四九九年三六四日二三時五九分五九秒に減らしてあげよう。
「俺はブルータスだ。外見などは、風土病だ。
特に、川田君間違えないでくれよ?」
「了解です。」
風土病については、後できっちりこってりと絞らせてもらうけどな!
「俺ぁ、野口英世っす。右手がまだイカレちまってるが、まあ左があるんでぇいけると思うべ?」
変な口調だなぁ・・。しかし、何故疑問形?・・ああ、利き手が右か!成程程(※誤字ではない、重ねて使うことで、意味が強調されるらしい)
「皆からQ太郎、Qちゃんと罵られている、幼名九太郎、夏目漱石だ。
取り敢えず、お願いします」
お辞儀をする。ちょいと自嘲するのかな?
すると、押勝が
「九太郎、いい加減自分を自嘲するのを自重しようぜ!」
と云う。
そういうと、夏目が押勝を殴る。押勝は、咄嗟に首をかしげ躱す。
「危ねぇ!!」
「ち、何で躱す!?」
「いやいやいや!今完全に顔面狙ってたでしょ!」
面白いなー。こういう、命を張ったツッコミとボケは。
「私は皆のマドンナであり、ヒロインのフィネーでーす!」
「おい、ちょっと待て!マドンナの意味を知っているのか!?」
肩をつかむ。「
え、知ってるの?」
「いや、しらんけど」
・・・しまった!ついツッコミ精神が!
ちょ、フィネーの機嫌があからさまに悪くなってないか?
と思っていると「因みに、私は翔太と付き合ってまーす!」劉備は吹く。
WHY!?しかも、抱きついてくるし!まあ、避けたけど。
「酷い・・」
ち、涙腺使いか・・!
我が命のlife pointが風前の灯火だぜ!・・危ねえ!!
殴りかかってくる、福沢・夏目。
「キサマァ・・。キサマは彼女を歯牙にかけたか!」
「汝の見境なき暴力、もはや見捨て置けん!」
「将軍口調を使っても、僕は現代文明人です。
平成の人です。戦国の方は、今直ぐタイムってわひゃあ!?」
声が裏返った。此奴、鋼鉄バットを投げてきたぞ!
くそ、あの女[あま]ほくそ笑んでいやがる。許せぬな、これは。
我が罪は、もはや冤罪。というわけで、土下座。
「彼女とは、別れますし、この野球試合以降は絶対に会いません。
御免なさい。」
「よし、いいだろう」
夏目は腕を組み、こちらを見下し許す。
しかし、福沢は自分の顔近くにバットを勢い良く叩き突く。
すると、頭を踏まれる。
「・・・」
ぐ・・土下座をしたから、侮辱なんてことはもってのほかだが、明らかにやりすぎだと思う。
「この試合以降、俺達の前に二度と現れるな。
現れ、彼女に再び会うとしたのならば、キサマをっ・・」
行き成り頭が軽くなった。
「川田!頭を上げるな!」
押勝が叫ぶ。その通りにした。
その瞬間、体全体に重力がかかる。
「よぉ、テメェら、誰が喧嘩していいと言った。」
自分は振り向いた・・。レンだ・・・。肺の中の空気が、外に出ていく・・。
「なあ、そんなに・・『死にたいか』」
! 声が三重となって聞こえた。高い声、地声、低い声。
しかし、それは威圧には十分だった。福沢は気絶していた。
「・・・さっさとやるぞ」
レンは、ミットを手にはめる。
自分は立ち上がろうとするが、生まれたばかりの馬の赤ん坊のように直ぐによろめ、倒れた。
「つ・・」
脚がしびれている。酷いな、あれは。
再び立ち上がったが、ふらついた。しかし、フィネーが、支えてくれた。
「大丈夫?」
「いや、全く。」
肩を貸してもらった。
「・・・御免なさい」
「・・・」
彼女も、ほかの方を見て言う。
「私も、調子に乗ってしまって・・。」
反省はしているようだ。鵜呑みにはしないけど。
「まあ、何はともあれ、仲直りの握手をしよう。」
亜米利加方式かな?
違ったら、すみません。
「うん!」
明るい笑だな、そりゃ誰でも好きになるわな。
手を離す。自分はまた転ぶというより、脚を崩す。
「あっ」
「おっと、危ない危ない。足首危ねー」
「待って、今・・」
「いやいや、いきなりお節介過ぎじゃねぇか?」
「・・・」
「まあ、立ち上がるくらい馬だって鹿だって、すぐにできているんだ。
僕も哺乳類だ。直に立ち上がれると思う。」
「・・・」
おいおい、表情を読み取りやすいぞ、もっと隠さないと。
あのあと、フィネーに肩を借りたまま、ベンチへ移動した。
「いやぁ、災難だったねぇ」
同情してくるのは、田中君だ。普通の中学生で野球部だ。
「本当にまったくなもんだよ。何でああまでするんだろうね。」
昔の人・・と言っても明治くらいなんだが、結構恋に関してはどんどんと進んでいく様な性格だったと思うんだけど、今の平成の人みたいに臆病になってるよ。
何故だ?
「じゃあ、川田君はかなり年上で怖い先生や警察に文句を言える?」
「無理です。御免なさい。」
癖で、おじぎをしてしまったよ。
この癖も、徐々に直していかないといけないんだよねー・・めんどくせー!
「だよね。」
「ですよねー。それで、田中君も彼女の亊が好きなのか?」
「本人の前で、言うわけないじゃないかー」
田中君は笑いながら応える。本人は何故か、ずっと自分の右隣に居る。
「ですよねー!」
「・・・(何で其処を強調するかなぁ・・)はぁ・・」
? 手に顎を置いてため息かい。何を考えているんだか・・。
数分後、動けるようになった彼は、準備体操をする。
相手は後一人のチームメンバーを除いて全員来ていた。
「暇だなぁ~、卓球したいな~」
一人で愚痴る川田。
「うん、その気持ちよくわかるよ。
何週間、何箇月もやっていないと体のあちこちが疼くよね!」
共感しまくる田中。
「ああ!そして、久しぶりにやったときのストレスの開放感はもう、なんといったらいいか!!」
さらに盛り上がる川田。
「そうだよな!
屋外、屋内かかわらず使われなかったところが使われて、一気に曇り空が青空に晴れ渡るよな!!」
本当に盛り上がる田中。
「そこで、川柳をいくつかどうぞ!!」
田中にネタをふる川田。
「われらが青春 ぶちかまそうぜ ホームラン!
せこくても ちゃんと当てれる バントだぜ!
怖くても やっちまおうぜ みなさんよぉ! 汗と涙と 白熱の勝鬨を!」
盛り上がった所で、見つけに行った二人と残りの一人が帰ってきた。
プラスもだ。
で、その三人は・・「ちょ、ヤンキーかよ!」川田は突っ込む。
「ヤンキーか、戦りがいがあるぜ!!」
完全に炎・・じゃなく、灼熱の業火と化した田中が結構危ない発言をする。
しかし、既にここの住人の能力やすること自体が危ないので、なんと言えばいいか分からないが、救いがない。
「俺がこいつらのリーダー、上杉憲実だ!」
リーゼント(ボンバーヘア?)という髪型ではないふつうの髪型で、口にポッキー、胸のポケットに其れの箱。
そんでもって、水蒸気を多く出す水素バイクに乗り、黒いサングラスをかけ、白いハチマキと手袋、そんでもって、ちょいおかしい学ラン。
「って、ヤンキーじゃなくて、応援団!?」
しかも、背中には白い筆書き印刷の『愛』という文字がある。
「ちょ、色々無理がありすぎる。」
川田は少し引いていた。劉備は頭を抱えていた。
実際日本史には関係ないが、後に解る。
そして、山下は顔を隠し笑い、神樹も表は彼を睨んでいたが、耐え切れなくなり背を向け手で口元を隠し笑う。
そして、ブルータスは己の姿の亊を忘れ、「これは、笑うしかないのか?」
と呟く。
「いや、これはわらっちゃいけないとおもうよ?」
恵美は冷笑しながらいう。
「・・・何だ・・これは・・タイムパラドックスか?」
福沢がよくわからない亊を喋る。
「こりゃぁ、世紀の大発見だぜぃ!」
野口は既に意味違いな亊をおっしゃっている。
「あーあー、何も聞こえなーい。」
Q太郎は耳を塞ぎ、聴き見ぬ振りをしている。
そして、劉備が頭を抱えていた理由が之だ。
「法正・・馬良・・・」
二人は、上杉と同じ格好であり其々に、『正義』と『仁義』の白い筆書き印刷が背中にあった。
「お前たちはMOBじゃないだろう・・。」
「戦の時と裏仕事(内政)以外は、何もすることがねぇんだ。致し方あるまい。
それに、サボリ(劉備)も居るしなぁ。」
口は笑っているが、目は全く笑っていなかった。
「そ、それで、馬良さんはどのようなご要件で?」
人徳の代名詞が、縮こまって会社のしたっぱのような存在となってしまった!
「ククク、この老耄はキサマのような貧乏神に憑かれた野郎につき、帝位までのし上げさせる様に苦労してやったのに、ジジイに精神と体力をガリガリと減らさせる仕事を普通、押し付けるか?」
バットを槍の様に、くるくる回しながら笑っている。
爺さんが予定時刻に来なかった息子を、終に堪忍袋がぷっつんしてヤッちまう時のような笑だ。
主に爺さんがとてつもないサディストだったばあいだけどな!
しかし、本当にキレてしまい、これ以上の怒りを際限なく爆発させたときはこんな顔になるのだろう。
其れに怯える劉備。
「ふ、普通はしません・・はい。」
「ククク、キサマの血肉が裂け飛んだ時、どんなふうに薔薇の花びらを散らすのだろうなぁ・・?」
目が完全にあれになっている。
重信はちょいと引いている。レンは彼を見直す。
なぜかは知らない。
「こ、こ、怖い亊を仰らないでくださいよ・・。
綺麗に飛び散る訳がないでしょうに」
「ほぅ。」
正に、計画通りという顔だ。
「では、キサマらが先行になれ、そして、この屑が最初の打者だ。
俺が綺麗に咲かせてやるぜ・・?」
劉備は、審判なのに自軍に加えられた。
劉備は体育座りで、ベンチの端っこのほうで座っていた。
「ゴラァ!!劉備玄徳、出てこんかあ!!」
白眉が逆鱗している。
「よーし、気張って逝ってこい」
重信が、劉備の腕を掴んでベンチから蹴り出す。
へっぴり腰のまま、ホームの左側に移動する。
勿論、黒い穴の重力と反物質、ダークマターで作ったバットを持たせて、だ。
劉備の顔は、青ざめている。
今、言おうか、ピッチャーやバッターの省略英語はいらない。
これ、決定事項。
「・・・・」
劉備は、ちゃんとした姿勢を取った。捕者は、いらない。
ボールは、壁に反射させて戻す。
白眉の勢いに押され、そのまま戦争開始。
彼はミットを手にはめ、滑り止めを握る。
ミットの中のボールを手に取る。
「さーて、死ぬがよい」
「まだ死にたくない!」
「ならば・・打て。」
白眉は投げる。
この投球が、普通の力で投げられていればかなり大きく飛ばせただろう。
しかし、こいつらは人以上人外以内の存在と肉体精神であるため、普通ではない。
よって、投球が劉備の振るったバットに当たった瞬間、ボールは慣性・速度・回転でバットの硬さ・重さ・前に進む力に打ち勝った。
此れにより、バットがバキッと折れた。
折れた部分は、高速に左に回転しながら上の観客席に飛んでいった。
床・壁・席を、破壊する音が響きわたる。
肝心のボールは、壁を大いにへこませ溶かして止まった。
すると、破壊音が止まる。
「俺、様子を見てきます!」
恵美押勝が、鋼鉄の防護柵を抜け、外へ見に行った。
「僕も見に行って来ます!」
川田もベンチを抜け出す。
観客席にいたのは、青年だった。腰に西洋剣を帯びている。
本人は、全く怪我をしていなかった。
しかも、右手の中には、半分融解しているバットの刀身があった。
「危ないではないか」
固い口調で言う。
「は、はあ。でも、僕がやったわけではないので・・」
「分かっている。」
そのとき、恵美押勝もきた。
「お、ソードマスターじゃん」
「よぉ、女たらし」
「ちょ、おま、酷ぇ」
「其処は肯定するよ。」
「川田もか!」
いきなり騒がしくなったが、野球の方はというと、劉備は三振。
次はレンだ。
「さて、来い」
投手は、白眉に代わって上杉。
レンは、投球を打つ。レフトゴロで一塁へ走った。
またこの時、フィネーとブルータスが観客席に行くため外に出た。
次は重信だ。投球を打つ。
それは、屋内であるため、端っこの角に何度か当たって反射し帰ってきた。
すでに二点を先制している。打球は、反射し、観客席へ行った。
「む、くるか」
ソードマスターが立ち上がる。
「ま、待てよ。早まるなって」
押勝は、ソードマスターを鎮めようとする。
当然のことながら、ボールは一つだけ。替えは持ってきてない。
「・・・まさか・・」
川田はボールを見て呟く。
すると、彼はフィネーに襟首を引かれ体を倒された。
「ぐっ」
彼女は身を前に出し、左手だけで向かってきた打球を握る。
手からは煙。驚く川田。
「フィネー、手腕はめげていないか!?」
「大丈夫だよ」
彼女は腕を曲げ、投手にボールを投げ返す。
「手腕が良くても、手のひらは・・」
彼女は左手を握り隠す。
「大丈夫、心配しなくてもいいから。」
「・・・わかった。」
しかし、好奇心旺盛の川田は、自然界と部活で培った瞬発力で脚に力を入れ、手を隠した方向に体を動かす。
慢心していた彼女は、咄嗟に動くことが出来なかった。
「・・・うわぁ」
バカ正直な川田は、言ってはならぬ言葉を発した。
というよりも、この場面で言ってよい言葉など思いつかない。
「なるへそ。うん、大丈夫だね。流石、この世界に生きているだけあるね」
気まずいために、色々付け足す川田。
この時、ベンチから舌打ちが聞こえた気がしたが無視する。次は神樹だ。
彼は刀身の方を持ち、握り手の方を打つ方にする。
完全にネタの打法だ。テニス、卓球、バドミントンでいうなら、淵で球や始球を打つというのと同じだ。
ネタといえば、金管楽器の先に石鹸水を付け、音を鳴らすと泡が出来るとか。
無理だろうけど。
さて、神樹はその打法で打つとスカッてflyしてout.
勿論バットは折れた。
「く・・山下さん、後をお願いします。」
「刀身だけ渡されても困るんだけどなぁ。」
ごもっともである。彼は新しいバットに変えて、神樹と同じ打法にする。
「ふん!」
投球を打つと、上杉の股間に当たった。一点先取、合計三点。
「よし、次は川田だ。」
「は?」
行き成りの振りに、瞬間的に驚いてしまった。
「いいから、来い」
何時の間にか、隣に転移していたレンに襟首を掴まれ、ホームベースになげつけられた。
「おぶっ」
顎をすった。
かすり傷程度のものだった。自分は痛む顎をさすりながら、起き上がる。
バットも持ち、打つ場所につく。
一発目、バントをしようとしたが、投球の回転が速すぎて、溶けた
。
「・・・使えねーじゃねぇか!」
壁に溶けた二つの棒きれを投げつけた。
二発目、全く出番のなかった武器・・『消火器』。
「よし!」
「何処から出した!?」
押勝が突っ込んでくるが、「気にしたら負けだ!」と大声で言い返した。
「どんな感じで負けなの!?」
「一々うっせえ!」
押勝の後頭部を、ソードマスターが挙拳を落とす。ゴッと痛々しい音が響いた。被害者(笑)は、コンクリの床に陥没した。
で、いきなり起き上がる押勝。
「痛いな!何すんだ!」
「煩わしい、少し黙ってくれんか」
「静寂はいやなんだ!耐え切れない!」
突っ込んでいる間にも、此方は緊迫状態だった。
「さあ、絶望するがいい!」
「いーやーだーね!」
消火器を振るう。 カンッ と甲高い音がなった。
「あ。」
flyだ。走ることもせず、その場に立ち尽くす。
どーせ捕られるだろうと、帰る準備をしていたら、「あぼーん」と重信が言う。
上杉は其の時、飛び球の真下で其れを捕る姿勢を示していた。
実際は捕られるのだが、今の言葉で地面がファンファーレと共に爆発。
投手の上杉は、腕で顔を隠しながら吹っ飛ばされた。
そして、飛び球が地面に落ちる。
球の下には、「引っかかってくれてありがとう(爆笑)」という文章の書かれた長方形の布と黒くくすんだくす玉があった。
「くっそ、せこいぞ!」
「は!死合にせこいも糞もあるか!」
「くす玉なら、めでたいときに出しやがれ!」
「馬鹿か!此れはくす玉ではなく、『かんしゃく玉』だ。」
「な・・んだと・・?」
どいつもこいつも、ノリが良すぎるだろう。
其れはさておき、三球目。
・・説明したっていみがないか、普通に三振。交代だ。
自分は外野だ。
理由は
「内野は死ぬ。外野はぎりぎりの命だ。」
と重信に言われ、夏目漱石・自分・押勝・劉備は外野へ送らされた。
一応ミットは装着してある。
あの剛速球には、全く意味を為さないだろうけど。
一回目、法正だってさ。
彼は眼鏡をケースに入れて、ベンチへ置いてくる。
「では、参りましょうか」
明らかに、殺気が混じっている。こんな外野にも、もろに届くほどだ。
何処かの無双ゲームでは、剣を持って戦ってくれるんだよねー。
しかも、彼を操作して、内政と外政と戦で戦果を上げられるというチートなんだよ。
それはどうでもいいんだ、今は現実を見よう。
福沢諭吉は、ベンチで未だに気絶している。
またブルータスは、腹が痛いと言い休憩中。
また、そのブルータスの腹痛の原因を知っているフィネーが看護している。
・・ということは、内野は五人。投手を外して・・4人。
無理ゲー。それなのに、内野の五人は、余裕の笑を浮かべていた。
一塁は田中君 二塁は神樹さん 三塁は山下さん 自由捕手はレン
投手は重信だ。
あーうん、このメンツなら行けそうな気がする。でも、油断大敵だ。
自分は一塁と二塁の間からかなり後ろに居る。隣人が、押勝。
「おい、押勝。」
「何?」
「死亡フラグを建てるなよ?」
「アハハ、建てるわけないじゃないか。」
怪しい。きっとマウンドに降りてくるとき、何か言ったな?
カキン
ん?バットの打音?
音の鳴った方を見ると、打球がこちらへ猛スピードで飛んでくるのが分かった。
「やべえ!」
押勝の両脇に手を置き、腕を握る。
そして、逃げないように浮かばせ、自分の盾に使う。
「恵美押勝シールド!」
「な、何するんだ!ぐぼあっ!」
球をどてっぱらに受けた此奴。
「よし、」
此奴を投げ捨て、此奴の腹にめり込んだ球を拾い、投手に球を地面に転がせ返す。昔から上投げは苦手なんだよ。出来るのは、横なげと下投げ。
「よし、任務完了っと。」
・・・嫌な予感しかしない。何故だろうか。悪寒がする。
ガイン
可笑しな打音だ。またも此方か!打者全員左利きか!?
しかも、重力を振り切って放射線を描かず飛んでいる。
取り敢えず、捕る。
でも、とった瞬間球に当たったミットの生地が溶けた。
直ぐに球を取り除き投げ返す。
「あっつ!!しかも、いてえ!!」
これを見て笑う、押勝。
「テメェ・・」
「他人の苦痛を見るのは、とても楽しいな」
夏目漱石が、そうつぶやく。自慢じゃないが、自分は地獄耳なんだ。
「おい、Q太郎。其れは声に出して言うんじゃねぇよ。」
「ん?何か言ったか?」
「よーし、テメェは自分を怒らせた。其処におれよ!今消火器の中身を御馳走してやる」
消火器を携えて、奴の居るところへ行った。
「何だか、後がうるさいな」
神樹は呟く。
「本当だねぇ。もう少し黙っていて貰わないと。」
一番手の空いている山下は、後に行った。
いま、4点取られている。何があったのかを説明しよう。
一点目、川田がチンタラしている間に法正が一周。
二点目も、同じ理由で上杉一周。
三点目、逆光で球が見えなくて劉備の頭に命中。白眉は其の隙に一周。
4点目、バットの表面に粘着テープが貼ってあり、打者が投球を右回転させ、地面に落とし、地面に穴を掘っている最中にフェイント有りで一周。
で、MOB一人が一塁。
真実を言うと、川田の見た内野の笑は、「こりゃ劣勢だ」という苦笑だったのだ。
彼にとって全員強いため致し方ないが、相手がMOBであっても所詮この国の人間。
何かしら可笑しな亊をしてくるのではないか?、と疑うべきだった。
「おい、重信。」
「何だ」
レンが重信に尋ねる。
「田中と代われ」
「ああ。分かった。田中」
「おっしゃあ!!燃えて来たぜ!!ヒイイィィハアアアァァァ!!!」
田中は、役割交代をしたら、直ぐに投球をする。
それは、光速を一時的に超え、風をきる音が一瞬だけ、可笑しくなった。
MOB打者は、呆ける。ボールは田中の手中に。
「ち、舐めやがって!」
こんな理を捻じ曲げている戦の最中、川田が山下の所へ来た。
「山下さん」
「何かな?」
「この試合のルールって何ですか?」
「この試合の規則は、50分の間に相手から何点とれるか、というものなんだよ。だから、試合交代の表裏がない。
そして、OUT三回で交代というものもあって、選手の体調や練度で差が一様に開けるんだ。
そして何より、その自由さから死亡者が出たこともあるから、死亡者を出さないように、というのが此れの決まり事。分かったかな?」
「有難う、山下さん!」
川田はお礼をして、右側の外野へ戻る。
そして、再び夏目・押勝とのじゃれ合いも再開した。
この時、劉備の意識が回復した。
「つつつ・・何が・・」
痛む頭を、押さえながら起き上がる劉備。
「劉備!遅い!」
「すまぬ!」
白眉がベンチから大声で言ったため、ここまで十分すぎるほど聞こえた。
これにより、劉備の心臓n鼓動回数が飛び跳ねた。
「はぁはぁ・・あー、驚いた・・」
「どんまい、漢中王!」
「あ、ああ。」
忘れていた称号を押勝が言ったため、少し戸惑ってしまった彼。
ついでに補足。
この野球が始まる前に、夏目が第三打席だったのだが、白眉のおかげで狂わされた。
また、敵勢力が意外にも、強かったので撃てる奴から入って行った。
あと山下の説明は、少し間違っている。
彼は「選手の体調や練度で差が一様に開けるんだ。」と言っているが、ただこの世界の人達は様々な因果律から融合された最高種なため、人以上人外以内の力と知識を携えている。
故にたかが体調不良や練習不足で、差が開くわけがないのだ。
しかし、最高の因果律をもってしても、その人物が過去に何をしたかによってかわるため、最高種である庶民が呂布の武器と実力を持って、張飛と関羽、劉備と対等に戦える、なんてことは出来ない。
所詮、庶民は庶民、呂布は呂布である。己の全ての過去には逆らえないし、ゲームのようにProfessional Action Replayで改造はできない。
そんな抗いようのない事実だが、遺伝子レベルではできるという矛盾。
まぁ、簡単に言えば法治社会のようなもの。末端を粛清・変更しても中央の腐食した所を完全に粛清せねば、社会も国も花を咲かせない。
ずばり何が云いたいか。
それは、試合は今も昔も因果的な実力ということだ。
こんなことを説明している間に、田中の奮闘のおかげで交代だ。
得点は十六‐三 絶望的過ぎる。だが、田中だけは違った。
「お、おい。次は俺「黙れ小童!次は俺だあああ!!」了解っす・・」
押勝は、田中に任せた。
いや、打順を交代しなければいけなかった。
「まあ、次があるさ」
ソードマスターが、押勝に言う。
「そうだね。一分だけ寿命が延びたと思えばいいや。」
負ではなく、正の方の考え方を常にする。
「三六分」
神樹が、バドミントンなどの球技で使うタイマーと得点板が一緒に装着してある機械を見る。
「おーい、ブルータス。まだ生きてるっすかー?」
「ああ・・」
「・・レバーいるか?。」
「食あたりするがな!ぐっ。」
頭に十分に血が行っていないブルータスは、大声を上げてしまったため眩暈[めまい]がきた。
「それは、生レバーのばあいだろーが」
「いや・・そうなんだが・・取り敢えず、ひじきで頼む・・」
「ああ、商品名『ごはんですよ』だろ?」
「・・・」
「あ、死んだ」
「死んでな(ね)い(ぇ)から!」
フィネーとブルータスが、野口に向かって言い放つ。
「うおお」
「いだっ」
「痛がらない!男共、全員ベンチから外にでろ!ついでに川田は残っとけ!」「何で、男口調!?それより、何で?!」
「みたところ、中学生と見た。保険習ってんだろ。早くこっち来い!」
「涼んでたのにー!」
「なんにもしてねぇじゃねえか!」
焦り気味なフィネーは、口調が変わってしまうようだ。
しかし、彼女の言うとおり、川田は夏目と押勝とじゃれっていただけである。
また、MOBチームはそれを嫌ってあっちへボールを打ったというのも、事実だ。
彼らの行為は、MOBの中の一人に怒りを覚えさせていたりする。
其奴はいつの日か言われた。
「我ら政治家は、暇間[いとま]の間でも政務に励んでいるんだ。
だからいつでも遊べる庶民は、いつも大変な政治家の文句や我侭につきあえよ。言っておくが、文句はなしだからな?
お前らのかわりにやっているんだからな、よりよいお国のためにな。」と。
しかもワガママが、野球・相撲等の八百長・賭博、税金横領、また放送運営会社を利用して、募金詐欺、振込、フィッシング、土地、パチンコ等の億を超える酷い国の不利益亊を起こしている。
戦争に負けた日本の政治家のようだ。
それで、彼は怒っていた。文句は言わない。
しかし、やることがやることなだけに、面倒だった。
・・・とあることをやっていた川田は、水分補給をすることにした。
しかし、その水を舌に触らせた瞬間、鋭い痛みが走ったので吐き出した。
「硫酸・・」
舌から血がたくさん出る。彼が飲んだのは、持参していた水筒の水だ。
彼は直ぐに、自動販売機へ行って、オレンジジュースを買った。
そして、蓋を開け、地面に中身を結構落としてから、口に含み口をゆすいでから、木の根っこ付近に吐き出した。それを繰り返す。症状は、舌が焼けたというのと同じだ。脱水作用だ。細胞が壊れ、其れを治すために血液が出てきたのである。彼は帰ってきたが、何も話さなかったため、不思議がる人がたくさんいた。すると、重信が彼に近づいた。
「川田、君、こちらへ来てくれるか?」
川田は首を縦に振る。外に出て、外にあるベンチに腰掛ける。
「口を開けろ」
「・・」
彼は少し開ける。其の時、血液が結構出てきた。
重信は、川田に向かって手を向けた。
重信の手は、緑の光に包まれ、光の粉が川田の舌に触れる。
粉が触れたところは、次々と元の状態へと治っていく。
「・・(すげぇ力)」
「よし、完治した。その症状を見ると、硫酸かな。」
川田はうなづく。
「では、その水筒を貸してくれないか?」
川田は少し不思議がったが、取り敢えず了承し持ってきた。
重信はそれを手に取る。
「こちらで、この水筒の掃除は任せてもらおう。中身がアレなのでね。
分解してから、接合し新しくしてもっていくよ」
初めて重信が、柔らかい口調で川田に話した気がする。
今、屋内では死闘(?)が行われていた。まず、夏目が金剛バットを一塁の捕手に投げつけ、気絶してから空気中の水分を窒素とともに凝結させ、
投球をライトゴロで、一塁付近を結構過ぎたところまで送球し、彼は一塁まで走っていく。
「楽勝だな。一塁のキャッチャーは、なんて雑魚いんだ。」
次、恵美押勝。彼は、投球が速すぎるため、バントで打った。そして、色んな取り巻きから逃げるために鍛えられた足腰で、取られた打球を一塁に持って行く前には、既に一塁に押勝はいた。
福沢諭吉は復活した。彼はバットを持ち、投球に向かって実際の体と同等の質量を持つ幻影で合計5回連続で打つ。ライトの外野にいる敵選手の左足を砕いた。
「足があああ!!」
「精々、己の命運を恨むんだな」
野口は、陰陽師に貰ったお札で、自らに鬼を取り憑かせ打つ。
打球は、捕手一人の腕を吹っ飛ばした。一人、此処に死亡した。
次は、神樹。
彼は投手が投げた瞬間に、金剛バットを投手に向かって投げ、気をまとわせた脚で思い切り蹴る。
其れは、高く飛びすぎて天井に当たった。
勿論取られた。
次は山下。彼は、「韻」と筆書きされた青色のスカーフを右腕に巻く。
「平でいいか。」
そういうと、握る混合バットの表面が青い光で薄く覆われた。
「平」は入りの音。
よって、ピアノ鍵盤で言う一番左端の音がガンと鳴り、投球された球はバットで触れることも無く、吹き飛ばされる。レフトフライか。
しかし、照明の真下で、よく見えなかった。よって、一気に4人周れた。
次は重信。投球を打つ。
しかし、その打球は時が止まったかのように、打点から少し離れた場所で回転や重力下降すらしていなかった。
その場に「有る」だけ。重信は軽やかに走る。
投手がそのボールを触ろうとした瞬間、放物線無視で一気に加速した。
簡潔に言うと、時が動き出した。
取れるはずもなかった。重信は、余裕の笑を浮かべて三塁で止まった。
次は、レン。皆、彼はやる気のないように思えた。
投球を適当に内野に弾いた瞬間、「跪け」と言った。
この場にいる重信と言った本人以外は、5Gの重力で地面に這いつくばったりした。
子供の夏目達は、観客席で座っていた。
(尻が痛い)
こう思っている間にも、彼ら二人はホームベースにまで戻ってきた。
次は劉備・・しかし、急激な重力負荷で腰が辛くなったようだ。
よって、次はフィネー。
彼女は投球に対して、バットを振り下ろすように振った。
打球は一回一回が、写真で取られた時のボールの動きのように、点々として移動する。
予測位置にいても、本当に消えるため取れない。
その打球は、後ろの壁に衝突するまで、誰も取れなかった。
劉備が休んだということで、白眉が文句を言ってきたので、攻守交代。
軍師軍団は、余計に曲がる打球や白線上だけで進む打球や、進退を何度もする自然界では有り得ぬ動きをする打球をしたりなど、おかしなことをやってのけた。
つーか、何故重信がいるのかというと、分身だ。式神に近いものだと思われる。
この時、漸く川田と重信(本体)が戻ってきた。分身は勝手に消滅した。
次は田中だ。時間的に後少しだ。
白眉が全力投球を放つ。田中は野球の構えをして、奥歯を食いしばり右足から
左足へ重点移動させながら、バットスイングを少し長くし加速時間を長くした。
これにより、打球は天井を突き破って遠くへ行った。
彼は一周、塁を走る。ホームベースを両足でジャンプしてから踏んだ。
「本職なめんな」
白眉を指さす。
しかし、このあと川田三振と、劉備の腰痛により攻守交代。
文に書き表すと、とても面倒で飽きるので書いていないが、どちらも総合点数は三桁行っている。この世界ならでは、だ。
(たったの四十五分で、どちらとも百点以上とれますか?無理でしょう)
今守備側。
今川田は、肩で息をしている。
「さ、流石に疲れた・・」
約四十五分間、碌に休めもできなかったのだ、致し方あるまい。
「疲れないのか・・?」
聞くと?
「正直、きつい。
でもソードマスターに災害を防いでもらっていたから、体力は回復したよ」
川田は押勝を睨みつける。
「(リア中しね!)」
そう言いつつも、背筋を伸ばす。
しかし、また猫背になる。
「あー、あぢー」
湿気と熱気で暑い。
換気しろよ!と、心中で突っ込んでいるが、生憎外は小雨だ。
今は、敵が攻める番だ。内野は、伝説の猛将が守ってくれている。
しかし、一部の者には、疲労が滲み出ていた。あ、山下が相手のMOB球を捕った。ストレートの直球を、直感で捕ったようだ。
その前に、山下と神樹がグローブを外して、敵味方の球をとっている。
「色々・・可笑しいだろ!」
疲れても突っ込む川田。
「まずい!ブルータス、右舷!」
「何!?」
重信が言うやいなや、ブルータスの股下を高速で転がって行った。
その球は、夏目が取って二塁へ送球。
夏目の後には、福沢がいて、こけていた。滑稽な様だ。
「がんばってるねー」
川田は、グローブを右の脇に挟み左手をぶらぶらさせている。
その様子をみたMOBは、川田に向かって打球を打った。
「うおっ!?」
左手で捕ってしまった。川田はボールを気にせず、左手首を抑えて悶え苦しむ。
「ぐああああ、いてえ!・・・・ああああ!!」
手は赤く腫れ、所々が青色だった。
「川田!」
福沢を手当していたフィネーが、川田の方へ視線を動かす。
「今行くから!」
「男だから少しは大丈夫だろ。」
福沢がいう。
「でも・・」
「この世界で生きていく辛さを知っておかねば、命にかかわる」
めずらしく良い亊を言う福沢。
これは、数秒でも長くフィネーの看病を受けたい、というものではなく、仝じ人間として少し心配しているのである。
「あーあ、言わんこっちゃない」
レンが左目だけを動かし、奴の悶え苦しむのを見る。
「どうする」
神樹が聞く。
「放っておこう」
「そうだな」
神樹は内野まで投げられた球を、受け取りながら了承し投手に返す。
「お前ら・・酷いな」
ブルータスが、川田の下へ行く。
「俺も行くっぺ!」
忘れられていた存在の野口も、彼に同伴する。
彼らが其処に行った時、川田は未だに叫んでいた。
「・・・逝ってもいいかな?」
苦しいから死にたい。でも逝けない。不老不死の悩みのようだ。
「逝くな。お前は死ねないからな。」
「あ、担架・・Please,me!(おくれよー!)」
「意味不明っす」
痛みで精神が疲弊した川田は、手首を握ったまま眠りに落ちた。
「It’s this.This is receivable!(これだ!受け取れ!)」
ソードマスターが、担架を五輪のやり投げのように投げる。其れは、川田の頭の横に刺さる。
「おっかねえ!流石、剣豪!」
「野口の言ってること、全く解らん!とにかく運べ!」
医務室に運んでいった。
また、試合の方も、4点程取られた。敵は喜んでいた。新しい打者が出てくる。
田中は冷静に怒る。そして、構える。
「よくも、よくも川田を殺したなああああ!!」
「憤る意味って、そっち!?」
押勝が冷静に突っ込んでいた。
死合とは、無慈悲である。敵味方を問わず。
一応『仲間』と書かれた半紙を背中に貼り付けるほど絆は薄い。
日本軍のようだ。
此の戦には、善も悪もない。
全ての力がある全ての試合参戦者に、勝ち、生き残る。
これが、其の戦に勝つ方法だ。援助も救援も保護もない。
己の心と相手の心とのぶつかり合い。負ければ、死あるのみ。
しかし、それが全て適用されるわけではないのだ。
ところどころの空白は、A4にインクジェット印刷をしていた名残。
設定で、両端一行を埋めると其処の部分が除外されてしまうから。
さらに、それ以上の空白は絵を描いてはっつけていたから。