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91 このお姉さんがね

 大昔、ゲントウという科学者が、太陽フレアの極大化に伴う地球滅亡を回避するために作った装置カイロス。

 刃は、これを起動させるために必要なもののひとつ。

 もうひとつのキーとなるもの、つまりカイロスの珠と呼ばれるもの。

 これらは共に、かつてサントノーレという街に保管されていた。

 しかし、カイロス収縮派と呼ばれる人々が、この刃を持ち出し、ロア・サントノーレに安置した。

 カイロスを発動させまいとする一派である。


 今、太陽フレアは有史以来、最大の規模で極大化しつつあり、カイロスを発動させるべき時期が近づいている。

 そのため、あの刃を元あった場所、サントノーレに持ち帰ろうとしている。



「このお姉さんがね」

 と、少年はスジーウォンを振り返った。


「しかし、無造作に安置されているわけではなかった。恐ろしい仕掛けに守られていたんだ。昨日、見てた通りだよ」

 少年がまた稜線の先を見た。

 丸太は休むことなく、広範囲に積み上げられている。


「サントノーレには、こんな言い伝えがあるんだ」


 ヘスティアーに保護されし孤児、生贄を喰らう。

 ラーに焼かれし茫茫なる粒砂、時として笑う。



「いずれも、いろんな場面で流用されてきたんだ」

 例えば、秘密の部屋があるとする。それを開く暗号として。


「でも、元はといえば、カイロスという装置を起動させるための合言葉、みたいなものなんだと思う。もう、知ってる人は多くないけどね」


 と、「あんた、どこまで喋る気だい!」と、老婆が食って掛かった。

 それは秘密だ、と言いたいようだ。

「それに、あんたの説明には、間違いもある」


「えっ、そう? じゃ、続きは」

 少年はあっさりしたもので、説明を譲った。

「長老に話してもらおう」

 少年は、もう一人の老人を促した。



 手近な石に腰を下ろしていた老人が、ためらうことなく語り始めた。

 ペールグリと名乗った。


「あそこに突き立っている太刀。あれはカイロスの刃であって、カイロスの刃ではない」



 長老は話好きだったようで、快活に話し出した。

「まず、少年が話したことの間違いを正しておこう。ひとつめは」


 カイロス収縮派は、装置の起動を阻止しようとするものではない。

 むしろ、正しく起動させることを最優先する者。

 この装置は一歩間違えば、地球上の人類を一掃するほどの威力を有しておる。


「証拠は見せられぬが、今ここで、サントノーレの者が我々を注視している。ほれ、そこ」

 長老は、再び、今ここでと繰り返し、視線を宙に泳がせた。


 ンドペキは身を硬くし、武器を持つ手に力が入った。

 自分たちがすぐそばで聞き耳を立てているのを、この老人には見透かされていたのだ。

 ただ、目を合わすことはない。

 彼らにはこちらが見えていないし、声も聞こえてはいない。はず。

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