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91 優しい歌 ちっとも勇ましくない

 ひとつ目のお姉さんは、喜んで教えてくれた。

 教えてくれるばかりか、チョットマの話を聞いて、その場でオリジナル曲を作ってくれた。


 歌のレッスンといえば聞こえがいいが、チョットマにとってはヒア汗が出っ放し。

 なにしろ、これまで歌というものを歌ったことがない。

 口ずさんだこともなければ、聴いたことさえほとんどないのだ。

 また、近いうちに来ます、と店を出たときには、ぐっしょりと汗をかいていた。



 ふにやぁ、疲れたぁ。

 ま、でも私、音痴じゃなくてよかった。

 お世辞かな?


 エリアREFには風というものがない。

 ねっとりした空気が漂っているだけ。

 しかも、このところ、なぜかニューキーツの気温は上がり続けている。地下はまさしく蒸し風呂のよう。

 それでもチョットマは、鼻歌交じり。


 いい歌よね。

 きっと、ンドペキも喜んでくれるはず。

 うん。絶対いい。



「そばにいて」


 チョットマは何度も声に出してみて、音程を確かめた。


 でも、優しい歌ね。

 ちっとも勇ましくない。

 いいのかな、これで。

 隊の歌というより、恋の歌みたいなんだけど。

 まあでも、隊員たちは仲間なんだし、これでいいよね、ンドペキ。

 きっとパパは、いいね! って言ってくれる。



 エリアREFの狭い通路を行く。

 もうとっくに恐怖心はなかった。


 聞き耳頭巾のおかげで、かつては散々怖い思いをしたけど、いい人ばかりだし。

 通路に溜まった得体の知れない液体。

 そこに棲む虫。

 相変わらず、気持ち悪いけど。

 それに、この臭気も苦手。

 でも、今はここが私の住処って思う。

 私って、案外、順応性があるんだな。

 私のことで変な噂も耳にするけど、それもみんな含めて、私の街。

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