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71 とんでもない守護神

 スジーウォンは走り続けた。

 剣を大きく回りこんで、アビタットが消えた尾根の向こう側へ。


「スミソ!」


 返事がない。

 モニタにも姿はない。

 恐ろしい予感が胸を襲っていたが、足を止めることなく荒地を駆け抜けていく。


 水蒸気が剣に到達している。


「アビタット!」

「こっちからも見えてる!」


 水蒸気は剣にまとわりつくように、渦を巻いている。


「助かったみたいだな!」


 水蒸気は、自分やアビタットを追っては来ないようだ。


「とんでもない守護神だな!」



 スジーウォンは剣と二キロメートルほどの距離を置いて迂回し、稜線で立ち止まった。

 右手の斜面にアビタットの姿が視認できた。


「あれを!」

「マシンが!」


 いつの間にか、一体の殺傷マシンに追われていたようだ。

 スジーウォンに向かって突き進んでくる。


「そっちに戻る!」

「大丈夫!」


 たいした相手ではない。

 巨体ではあるが、鈍重で破壊力も大きくはない。

 一撃で倒せる。


「見ろ!」


 マシンの進路に、水蒸気に包まれた剣があった。

 きらきら輝く渦。

 荒地に現れた金色のハリケーン。

 その輝きに包まれて、剣は見えなくなった。



 マシンが金色のドームに差し掛かっていた。


 あっ!


 息を呑んだ。


「なっ!」

「消えた!」


 マシンは跡形もなく忽然と消滅した。


「恐ろしい……」


 ついぞ口にしたことのない言葉が口から出た。

 スジーウォンは我に返って、再び叫んだ。

「スミソ! 返事しろ!」




 辺りには轟然と燃え盛る炎の音が満ちている。

 応答はない。


 まさか……。


 アビタットが稜線を登ってきた。

「スミソ!」

 アビタットの叫びも、空しくかき消される。



 光り輝く水蒸気が、ますます濃度を増している。

 それにつれて水は落ち着きを取り戻したのか、ギラギラする光がまばらになっていきつつあった。


「水……」

 やがて金色は失せていき、やがて水そのものになった。


 透明の貯水タンクに入れられたかのような、直径五十メートルほどの円筒形。

 高さ五十メートルほど。

 水を透して、ロア・サントノーレの燃え盛る火が見えた。


 そう見えたのも束の間、水嵩は急速に低くなっていく。


 そして、無くなった。




 稜線の上に残された剣。


 地面に突き立ったそれは、何事も無かったかのように、太陽の光を浴びて光り輝いていた。



「おい」

「む」


 ひとっ走りで取ってくることのできる距離。

 しかし、スジーウォンの足は動かなかった。

 アビタットの足も。



「スジー! 急いでここを離れよう!」

 アビタットが叫んだ。

「了解!」


 スジーウォンにもその恐怖が伝わってきた。

 泉の水は地面に浸透したのだ。

 水が地中を走り、自分達を包むように吹き出したら。

 もう逃げきることはできない。

 さっきのマシンのように。


 アビタットの後を追って走り出す。

「あの水……」

 まさか、意思が。


 自分達を襲う意思を持っているなら。

 剣に引き寄せられただけならいいのだが。

 再び、言いようのない恐怖を感じた。

 どこまで逃げればいいのだろう。



「ついてきて!」

 稜線を駆け下りていくアビタット。

「僕のすぐ後ろを!」

 念を押してくる。

「この付近は危険。カットラインが張り巡らされている!」

「カットライン!」

 そんなものがまだ残っていたとは。

「急いで!」

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