66 きっとあの中にあるはず
艇が動きを止めた。
準備が整った。
サブリナに見えているだろうか。
なにが始まるのか。
飛空艇乗りは再び自動操縦モードにし、黒煙の中のサブリナを探すかのように上空を凝視し、諦めてモニターに眼をやった。
「私ができるのは、こういうことよ」
「んっ」
サブリナの声が聞こえてきた。
「ここっ!」
サブリナが座っていたシートの上に、角砂糖のような立方体が置かれてあった。そこから声がする。
「詳しく話をしてる時間はなかったから。少しだけ説明するね」
サブリナがそこにいるかのように、明瞭な声が聞こえてきた。
「見てて」
むっ。
強烈なエネルギーを感じた。
「おおおっ」
セカセッカスキが叫んだ。
「なるほど!」
飛空艇も抗しきれないエネルギー!
「浮き上がっている!」
黒煙が立ち込める中に、さまざまなものが浮遊しつつあった。
「見ろ!」
磁石にでも引き寄せられるかのように、重力に抗ってひとつ、またひとつと地面を離れてくる。
「あなた方が探しているのは、カイロスの刃でしょ?」
「そうだ!」
思わず、スジーウォンは叫んだ。
守秘義務など、もう気にしている場合ではない。
「特殊な金属。きっとあの中にあるはず」
街の上空に浮かんでいるものの中に!
「今から五分間持ち上げておく。その間に探して」
「了解!」
スジーウォンは叫んだ。
「素手では触れないかも。十分気をつけて」
「恩に着る!」
「今だ!」
セカセッカスキがハッチを開けた。
「成功を祈る!」
後ろを見ずに飛び降りた。
スミソが続いて飛び降りることは分かっていた。
もし、来なくても、それはそれでいい。
こんなむちゃくちゃな作戦で、死ぬのは自分一人で十分。
空中を落ちていく感覚など、そうそう味わうことはない。
しかも、落ちていく先は地獄。
地上に着く直前に、ブーツの浮遊モードをタイミングよく全開に!
姿勢を保って!
でなければ、地面に叩きつけられる。
緊張していいはずだが、スジーウォンは自分が落ち着いていると信じた。
目は、炎の中に浮かんでいるはずの剣を探していた。




