66 下品なお坊ちゃま達、わがまま放題のお嬢ちゃま達
スコープで見るサキュバスの庭は、パリサイドで溢れかえっていた。
どこから来たのか。
地下水系から上がってきたのか。
上階へ行こうと列を成している。
どれも均一なサイズで、ベルトコンベヤーでゆっくり運ばれていくかのように、ぶつかり合いながらジリジリ進んでいる。
俺たちは囚人か!
もっと真摯な対応をしろ!
汚らわしいネズミめ!
私に触れたわね! 気持ち悪いから向こうに行きなさい!
蒸し暑い! 息が苦しい!
死ね!
レベルの低い連中め!
私を誰だと思っている!
いくつもの愚連隊が狭い一部屋に押し込められたかのように、いたるところで小競り合いが起きていた。
「あんたが誰かって? 知らないよ」
黒い体が押し合っている中、埋もれるように、ライラがいた。
「きっと鼻持ちならない成り上がりだろうさ」
「なんですって!」
「はっ、おつむの程度が低いんだね!」
もみくちゃにされながらも、何とかライラは立っていた。
行列が止まった。
サキュバスの庭から上階への階段は狭くて急。
これだけ多くの者が殺到すれば、たちまち詰まってしまう。
早く行かんか!
だからオマエはダメなんだ!
どいつもこいつも頭の悪そうな顔しやがって!
殴り合いの喧嘩まで起きていた。
ライラは群集にかなり押し流されている。
「地上に出たところで、構ってくれる暇人なんていないさ」
自分よりもふた回りも大きな体に押しつぶされそうになりながらも、パリサイドを罵ることをやめようとしない。
「下品なお坊ちゃま達、わがまま放題のお嬢ちゃま達、もといた穴倉にとっとと帰んなさい!」
あまりにもぎゅうぎゅう詰めで、マトの老婆がひとり混じっていることに、多くのパリサイドはまだ気づいていない。
しかし、非常に危険な状態だ。
群衆の怒りがライラに向かえば、捻りつぶされてしまう。
「なんだって、ライラ、あんなところに!」
スゥが叫びながら、装甲を身に付け始めた。
「スゥ! 扉を開けろ!」
ライラを助けなければ!
「ちょっと待って!」
「急げ!」
ンドペキは武器を手にした。
「ん!」
「必要なら!」
武器を使えば混乱に拍車をかけることになる。
しかし、いざとなればやむをえない。
「開けるわよ」
「よし!」