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64 恋人同士の話じゃないよね

「そのうちにまともなデートとか旅行、できるかな」


 ンドペキはスゥの事務所にいた。

 サキュバスの庭、ライラの部屋の隣。


「それにしても、さっきは驚いたな」

「へへ」

「ライラも一言くらい」

「気分屋さんだから」


 ここスゥの部屋は完璧に密閉されていて、政府に盗み聞きされる心配はない。


「彼女と私で、交代しながらやってるのよ」


 エリアREF内で、安心しきって話せるのは、ここと隊の作戦室だけだ。

 作戦室については、スゥが日常的にメンテナンスしてくれている。


「ちょっとした社会貢献」

「おまえの仕事ぶり、初めて見たな」

「それなりに緊張した」


 あの階段室は、年老いた兵たちの管理エリアで、会話は筒抜けなのだという。

「最初の扉、彼らの詰め所」

「だろうな」

「最近、姿、見ないけど」

「街の防衛に駆り出されてるんだろ。防衛軍も攻撃軍もいなくなったから。さぞ、張り切ってるだろ」

 アンドロの元で働くことになった彼らの心中は推し量れないが。



「さあ、じゃ、ゆっくり話そうか」

「ええ」

 スゥは、自分の部屋で恋人と一緒にいるからといって、馴染んだ素振りを見せたりはしない。

 ただ、心からリラックスしている。


「恋人同士の話じゃないよね」

「それはまた、次の機会」

「仕方ないな」

 といいながらも、スゥはうれしそうで、チョコチップなどを出してくる。


 階段中ほどのあの扉。

 レイチェル騎士団が篭っているシェルタの出入り口ではないか。

 話題はその一点に尽きる。


 しかしスゥの返事は、がっかりさせるものだった。


「そうねえ。違うと思うな」

「そうかあ?」

「あの先には」

 スゥは言い淀むこともなく、カイロスの珠が保管されているのではないか、と言った。

「想像だけどね」



 確かに、それもある。

 エリアREFで大切なものといえば、カイロスの珠。

 オーエンの同僚、ゲントウという男が作ったという、地球を救うための装置を作動させるアイテム。

 そんなものが実在すればの話だが。


「スジーウォンとスミソをロア・サントノーレに向かわせたんでしょ」

「まあな」


 まだ何の連絡もない。

 首尾よく、行き着いただろうか。



「それより、プリブの見つけた横穴。どうだった?」

「まだ調査中」


 うずたかく積もったゴミの下に見つけた横穴。

 これを完全に調べるには、それなりの準備が必要だった。

 ゴミの層の下には、それを受けている頑丈な格子状の金属の床があった。

 まず、これを通ってその下に降りていく必要があった。


「あんな重いもので蓋をされてるんじゃ、シェルタから出てくるのも大変だ」

「そうねえ。出てきたところはゴミが盛大に燃えてるし」


 なにしろ、金属製の格子の床は一メートルほども厚みがあり、しかも頑丈に固定されていた。

 しかも、ゴミは勝手に燃え上がり、始末に悪い。


「破壊してしまっていいものかどうか」

「まずいかもしれないね」

 エリアREFの構築物を勝手に壊してしまうのは躊躇われる。

「それに、そんな分厚い金属床、壊せる?」

「時間はかかるだろうな」

 今、コリネルスとパキトポークが現地で考えているはずだ。



「ところで、あの小さい方の穴は、大蛇様の通り道だと思っていいか?」

「そう聞いてる。でも」


 二百年ほど前まで、あの屋根の上で晒された死体が二週間もそのまま、ということはなかったらしい。

 再生システムにより回収されなければ、大蛇が平らげてしまう、というのが通説だった。

 ところが最近は、ほぼ間違いなく地下水系に流してしまうという。


「もう大蛇なんて、いない、ってことか」

「そういうことになるかな」

「それに、再生装置はもう動いていないぞ」

「まあね。でも、慣例だから」

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