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64 空中に身を投げ出して

 セカセッカスキの飛空艇内ではひと悶着起きていた。


「私が飛び降りる。あなた方は、その後」

「待て!」

 スジーウォンはサブリナの腕を掴んだ。

 ハッチのレバーを握ったその腕は、思いのほか硬かった。


「あんた!」

「あなた達、この炎の中は無理でしょ。ここで死ぬことはないわよ」

 サブリナが、セカセッカスキに流し目を送り、笑顔を見せた。

「おい! ふざけるな!」

「ううん。私に任せて」


 飛空艇は自動操縦に切り替えられた。

 セカセッカスキが立ち上がった。

 こいつに任せろ、というように顎をしゃくって。


「気でも狂ったのか!」

 しかしサブリナは平然としている。

「でも、私にできるのは」


 飛空艇の周りには黒煙が渦巻いている。

 窓の外に目をやった。

 艇はホバリング状態に入っている。


「あなた達が、その何かを見つけられるようにすること」


 外はまるで、嵐のような激しい気流。

 しかし艇は、ピタリと空中に停止している。



「タイミングを見て、飛び降りて」


 サブリナの目が光った。


「セカセッカスキ、うまく降ろしてあげて」


 飛空艇乗りは無表情だったが、了解したというようにうなずいた。



「サブリナ! 待て! やめるんだ!」

「いいから。時間、ないでしょ」

 サブリナが腕を振りほどいた。抗えない力だった。


「軍もこの様子を見てるんだから」

「しかし!」

「くどい!」


 きつい言葉と裏腹に、サブリナはまたも微笑んだ。


「艇は地上には降りられない。いいね!」


 飛び降りた後は、自力で炎から脱出しろということだ。

 パッドのエネルギー残量があれば、カイラルーシに戻れるだろうし、そのままニューキーツに突っ走ってもいい。




「じゃ!」

 と、サブリナがレバーを引き下げた。


 高度はいつの間にか五千メートルを超えている。

 空気が抜けるようなかすかな音がしかと思うと、スバッとハッチが開いた。


「行ってくるよ」


 強烈な風が艇内に吹き荒れた。

 この高さから飛び降りようというのだ。


「私もね、あんな熱の中ではさすがにね」



 なんら躊躇なく、サブリナは空中に身を投げ出した。

 その直前、にっこり笑いかけて。


 見る間に、落ちていく。

 燃え盛る火焔の海に向かって。



 セカセッカスキが、あっさりハッチを閉める。

 スジーウォンはどんどん小さくなっていくサブリナの姿を凝視した。

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