63 戦わずに、帰れるはずもない、か……
「言いにくいことなんだけど、カイラルーシ軍と戦う用意はある?」
考えないわけではなかった。
ロア・サントノーレへの飛行が軍に阻止される。ありえないことではない。
何と応えるべきか。
「そのときに考えるかな」
と言うしかないが、それが本心でもあった。
実際、そんな事態は容易に想定できる。
サブリナも、このことを一番に話し合っておきたかったのだろう。
「そのときか……」
笑みとも苦虫ともつかぬ、微妙な表情をみせた。
彼女にしてみれば、ロア・サントノーレ行きなど、寄り道でしかない。
面倒を引き寄せるだけの、余計な行程である。
ただ、現実問題として、空も飛べない自分達が、空中戦など演じようがない。
地上に降ろしてもらうしかないが、相手はそんな時間の余裕を与えてくれるものだろうか。
「戦わずに、帰れるはずもない、か……」
アビタットがそんなことをいった。
ニヤリとしている。
代わりに言ってやったよ、といわんばかりに。
「まあ、そういうことになる」
と、応えるしかない。
うまく地上に降り、森林に紛れながら戦うとしても、あまりに多勢に無勢。
しかも、敵地。
地上には、殺傷マシンもたむろしていることだろう。
サブリナが見つめていた。
勝てないよ、と言いたそうに。
思い過ごしだろうか。
今日初めてみせる真剣な眼差しだった。
そう。勝てるはずがない。
では、どうする。




