6 ぎごちなかった出会い
チョットマが彼と知り合ったのは、ほんの十日ほど前、ここライラの部屋で。
ライラの帰宅をひとり待っているとき、セオジュンが顔を覗かせたのだった。
二言三言、言葉を交わしただけで、チョットマはセオジュンが好きになった。
今まで知り合ったこともない相手だった。
なにしろ少年。
これまで、自分よりずっと幼い少年少女という年齢層を間近で見たこともなかったのである。
素顔が眩しい。そんな言葉がピッタリの男の子。
天真爛漫で物怖じすることのないチョットマが、どう話しかければいいのか、戸惑うほどだった。
再生時の年齢にミスがあったのか、あるいは稀にしかないことだが、本人がこの年齢を選んだのか。
それは分からない。
多くの経験を重ねた男なのだろうとは思いつつ、外見がチョットマを惑わせる。
「へえ、セオジュンっていうの?」
「へえって、そんなに珍しい名前かな」
「私は、チョットマ」
「お姉さんの方がよほど変わった名前だね」
チョットマにとってはぎごちなく、セオジュンにとっては生意気ぶった挨拶が始まりだった。
へえ、そうなんだ。
チョットマはこんな言葉ばかりを繰り返していたように思う。
セオジュンの話は新鮮だったし、知らないことばかり。
かといってセオジュンは、少年らしくいつも鼻高々、という態度でもなかった。
チョットマの数少ない武勇伝に目を輝かせ、この街の状況に聞き入っていた。
かと思えば、こんなことを言う。
「僕が将来、約束を破るようなことになったら、どう思う?」
「約束? そんなものしてないじゃない」
「例えばの話」
「そうねえ。約束より大切なことがあるなら、仕方ないんじゃない」
「赦す?」
「うん」
本当に子供なのかも。
それとも、やはり男の子を演じている?
何度か会って話すうち、チョットマはセオジュンがマトやメルキトとして再生された人ではなく、赤ん坊としてこの世に出てきたのではないかと思うようになっていた。
ライラが溜息をついた。
「ねえ、チョットマ。セオジュンは大丈夫だって。しっかりしてるから」
「もちろん! でも」
実際のところ、チョットマ自身、パニックになったり思いつめていたわけではない。
ライラが言うように、セオジュンは聡明で落ち着いていて、意味もなく飛び出していくような子供ではない。
危険の有無を把握し、その中身を理解し、避ける見識も備えていると思う。もしかすると自分以上に。
ただ、クシという名が心にのしかかっていた。
加えて、噂が耳に。
セオジュンの同級生、シーラン。
そして、彼らを取り巻く若い女性達。アンジェリナとニニ。
チョットマはその誰も知らなかったが、彼ら彼女らが、人を恋することが希薄になったこの世界でも噂になるほど、溌剌とした若者らしさを発散させていた。
そこにセオジュン失踪のヒントがあるのかもしれない、とも思っていたのだった。