53 簡単に答を出せるものじゃない
「さてと、家族水入らずの晩飯、といきたいところだが」
このところ、イコマとユウとアヤの三人は、毎日のように顔を合わせている。
「アヤちゃん、そう言ったからって、気にしないで」
場所は、エリアREFにあてがわれたアヤの部屋。
フライングアイは、ユウとアヤの食事を眺めているだけだ。
「おじさん、そんなこと言うと、ますます申し訳なくなるよ」
「ごめんごめん」
アギの身を、これほど恨めしく思ったことはなかった。
いつかは三人で元のように暮らしたい。そう念じて六百年を生きてきたが、いざそれが叶うと、己の身が悲しかった。
「それはそうと……」
イコマはアヤの顔を見つめた。
目を伏せ気味にして、食事を摂っている。
笑い声がはじけるような食卓風景ではない。
なにしろ、エリアREFは連日、攻撃に晒されている。
そして、彼女にとって、気の重い課題もあった。
「またにするか?」
話題はさまざまにある。
ロア・サントノーレに向かったスジーウォン達のこと。
今もセオジュンの行方に気を揉んでいるチョットマのこと。
エリアREFでの出来事や、街の噂。
あるいは、将来の家族としての夢、というような話題ならいいのだが。
この課題がある限り、いや、それが課題だと思っている限り、本当の幸せな食卓はやってこないような気もする。
「簡単に答を出せるものじゃないしね」
アヤが顔を上げた。
いつものように、微妙な笑みを作って。
「私……」
箸を置き、ドリンクに手を伸ばした。
「なんだか……」
イコマは言葉を待った。
きっと辛かろう。




