5 パリサイドと戦う気なのか?
街は、制空管制が敷かれていた。
噂では、戒厳令の発令も間近だという。
パリサイドの要求をはねつけ、戦闘による排除も辞さぬ構えなのだ。
街の長官ジュリエットは、多くの人類を連れ去った神の国巡礼教団を許せず、その末裔であるパリサイドも激しく憎んでいるという。
「私は、そうねえ、例えばニューキーツとかに行きたいのよ。大きな声じゃ言えないけど、もううんざり」
女は、戦争なんてごめんだ、という。
「だって、勝てると思えないもの」
「兵士の前で言っていいのか。そんなことを」
女が笑みを作った。
「だって、兵隊さんたち、カイラルーシ軍じゃないでしょ」
「……」
どうしてわかったのか。
カイラルーシ軍を装っているつもりでもないが、一般市民にもたやすく見分けがつくのだろうか。
この街で見かける兵も、特殊な装甲や武器を保持しているわけでなく、統一された記章などをつけているわけでもないのに。
見分けはつくまい、目立ちはしまい、との判断で装甲を身につけたまま街を歩いていた。
「ねえ、飛空艇が見つかったら、私も同乗させてくれませんか?」
「断る」
比較的賑やかな通りに入ったところで、スジーウォンとスミソは、女を解放した。
女はがっかりした表情を見せたが、たちまち人波に消えた。
「やれやれ。なんだ? あの女は」
「大都会の女だ。厚かましいんだよ」
「ふう。ここが大都会ねえ。それにしても、この街はどうする気なんだ?」
「ん?」
「パリサイドと戦う気なのか?」
「さあな。関係ないさ」
スジーウォンはニューキーツ東部方面攻撃隊、いわゆるンドペキ隊の伍長。
パキトポークと一二を争う武闘派幹部。
スミソは一般兵。
隊の中での地位は異なるが、言葉遣いに制約はない。
誰しもいずれ歳を取り、死ねば再生される。
再生時の年齢が若ければ駆け出しの兵士から再スタートだ。
今この時点での、歳の差や上下関係は意味がない。
あくまで、役割としての肩書きなのである。
それが東部方面攻撃隊の不文律であった。
「サブリナといったな、あいつ。なぜ、わかったんだ? 俺たちが飛空艇を探しているのが」
「聞いてたんだろ。空港で」
カイラルーシの空港は、さすがに世界一の都市だけのことはあって、それなりに混雑していた。
ニューキーツからこの街までは、定期運行の飛空艇でやってきたものの、着いたとたんに制空管制である。
しかたなく、乗り継ぎ便の有無を空港係員に聞いて回ったのだ。
「それにしても」
こんなことになろうとは。
ふたりとも、カイラルーシの街は初めてで、勝手がわからない。
「それより、今の課題は今晩どうするかだな」




