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47 もつれあう黒いローブ

 叫びも虚しく、銃口の奥が光った。

 瞬間、チョットマは横っ飛びし、壁に激突した。

 一瞬目が眩み、相手を見失った。


 スバッ。


 銃口から発せられたエネルギー弾は、チョットマのブーツをかすめ、岩壁を撃った。

 石が緑色の炎を上げ、見る間に溶けていく。


 第一撃は何とかかわした。

 瞬時に攻撃態勢に入る。

 所持しているのは小さなレーザー銃とナイフのみ。

 奴がいる方に銃を向けたが、引き金を引くことができなかった。



 ぐっ!


 目の前でもつれあう黒いローブが二つ。


 カランと銃が転がった。


 くそ!


 チョットマは自分を撃った方に照準を合わせようとしたが、

「下がっていなさい」

 と、落ち着いた声がした。


 えっ、誰が、と思ったのも束の間、ローブが血を噴き出した。


 がっくりと倒れていく。

 血の飛沫が、チョットマのヘッダーを汚した。


「あっ」


 あの手!

 倒れていく腕を掴んでいる手!

 もう一方の手には、血糊の付いた短剣。


 どうっ、と男が倒れ、血飛沫がまた散った。

 同時に、もう一方の男の姿が消えた。




 数秒ほど、チョットマは立ちすくんでいただろう。


 門番さんが助けてくれた……。

 プリブの部屋、そしてホトキンの間に至る通路の門番さん。


 違いない。

 あの鍵爪のような指。




 通路に飛び散ったおびただしい血。

 天井からも滴り落ちている。

 男の胸の辺り、胴体の半分ほども、ざっくりと切り裂かれている。


 チョットマの目は、視界から消えた門番の行方を追いはしなかった。

 倒れた男に釘付けになった目は、瞬きも忘れたかのように見開かれていた。


 危険はないか。

 やがてチョットマは、ゆっくりと息を吐き出した。

 すでに男に息がないことは明白だった。



 助かった……。


 汗が噴き出した。

 安堵感が押し寄せてきた。


 危ないところだった。

 撃たれれば、大怪我ではすまなかった。

 門番さんがいなければ、第二弾、第三弾は避けきれなかった。

 的確に応戦できたとは思えない。



 安堵が怒りに変わった。

 フードがはだけ、頭部が見えている。


 この男の正体を見極めなければ。

 クシとやらの顔を。


 ふざけやがって!


 チョットマは声に出さずにそう言って、男の顔を確かめようとした。

 死体を回り込み、顔を見た。

 血塗られて判別しにくい。

 まだ血が流れ出し、ローブを濡らしていく。



 一瞬、眩暈がした。


 えっ。


 腰が砕けそうになり、足が震えた。

 倒れ込みそうになりながらも、さらにその顔を見つめた。



 スキンヘッドに切れ長の目。

 東洋人らしい面立ちに、彫りの深い頬。


 そ、そんな!


 何度も見たわけじゃないけど、忘れるものですか!



 ハクシュウ!

 隊長!



 どうして!


 ンドペキとフライングアイが駆けつけてくるまで、チョットマは亡骸のそばに蹲り、その言葉だけを繰り返していた。


「どうして!」

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