278 JP01はフライングアイを
固唾を飲んで見守る人々。
パリサイドの船に取り込んでしまわれれば、いったい何をされるのか。
元はと言えば、狂信者集団、神の国巡礼教団。
洗脳され、資産を奪われ、肉体的にも思想的にも奴隷にされる。それだけならまだしも、もっと恐ろしいことが行われるかもしれない。
ニューキーツといえど、そんな恐怖が、市民にはまだ根強い。
だからこそ、パリサイドに居住権を与えることを拒否した街は多く、明確な態度をとらなかった街はニューキーツ含め数えるほど。
「人類が、その種を未来に紡いでいくために、長官、ご決断ください」
JP01が迫った。
ただ、自分達も人類だとは、ことさらに言わなかった。
レイチェルの心情は分かっている。市民に向けた言葉なのだろう。
ユウお姉さん……。
頑張って……。
アヤはこの様子をおじさんにも、ンドペキにも見せてやりたいと切に思った。
おじさんなら、この会談の様子をどんな気持ちで見るだろう。
壇上にいるレイチェルが偽物かもしれない、レイチェルが作ったクローンかもしれない、という疑問はもう意味をなさなかった。
本物のレイチェル。
そう信じたし、もしそうでなくても、ここは誰かが決断を下さなくてはならない。
たとえそれが、レイチェルのクローンだとしても。
いっそ、チョットマだったらよかったかも。
そんなことを思いながら、壇上の二人を見つめていた。
「繰り返し申し上げますが、私たちはあの教団とは無関係です。過去も未来も。そういうご不安もあろうかと存じますが、全く、ご安心くださって結構です」
JP01が説いている。
本当はレイチェルは決断しているはず。
パリサイドに対する嫌悪感は元々ないのだから。
結論を与えず、JP01に話させているのは、市民に聞かせようと考えてのことだろう。
しかし、やがてレイチェルは立ち上がった。
足がもつれた。
すかさず駆け寄るヒカリとスーザクに支えられ、JP01に近寄った。
JP01も立ち上がる。
「よろしくお願いします」
「こちらこそ」
ニューキーツ市民、原則全員、パリサイドの宇宙船への避難が決まった。
アヤはステージに駆け寄った。
「バード!」「アヤちゃん!」
レイチェルとJP01が同時に叫んで、ステージから飛び降りてきた。
二人はアヤを抱きしめ、そしてJP01はフライングアイを両手に包み込んだ。
注記:バードとはレイチェルがアヤを呼ぶときの名前です。「ニューキーツ」参照。




