4 竜神様とは関係ないし
「ね、私、セオジュンを探す。だから」
ライラが、ぴしゃりとはねつけた。
「おやめ! お前にゃすることがたくさんあるだろ!」
「だって」
チョットマは、エリアREFサキュバスの庭、女帝と呼ばれるライラの部屋で、小さな黄色いリンゴを前にしていた。
東部方面攻撃隊がエリアREFに駐屯するようになって、老呪術師ライラの髪のセットはより一層凝ったものになっている。
夫のホトキンがエーエージーエスのオーエンの元に去り、気持ちが解放されたんじゃないかと噂されている。
ライラは機嫌よく、小さなフォークをリンゴにプツリと刺し、さ、と差し出してくる。
「心配……」
「あいつは大丈夫」
「どうして?」
「考え無しに行動する子じゃない。それよりチョットマ、おまえの方こそ」
ライラが、YMUでのことを蒸し返す。
エリアREFの比較的地表に近い場所で起きた事件のこと。
ンドペキ隊はエリアREFの地理的全容をすでに把握していた。
レイチェルのシェルタ、あるいはその入口がこのどこかに存在するはずだが、その地点を除いて、という意味である。
まず、ゲートは思いのほか多く、最初にチョットマがプリブに連れられて入った出入口以外に、大小合わせて十二箇所あった。
最初に入ったあの出入口が最も広く、いわばメインエントランス。
出入口全てに、ンドペキ隊は呼称をつけていた。
それぞれ元素記号で、メインの出入り口はゲート・コバルト、略してGCOといった具合だ。
それぞれの出入口からの敵の侵攻ルートを想定し、主要な通路やホールやエリアや交差路にも名称を設定してある。
こちらは、エリアREFの人々が呼び習わしてきたサキュバスの庭のように、世界中の古代神や英雄の名などを宛てている。
「そのときの様子を詳しく教えておくれ」
ライラは心配顔で言う。
「隊長も、お前にああいう危険な任務を与えなきゃいいのに」
「それはないよ。ンドペキはだれでも特別扱いはしないよ」
「でも、お前は」
「それは言いっこなし、じゃない」
エリアREFにはすでに、妙なことを信じている者がいるという。
チョットマがエリアの守護神と崇められる大蛇に守られている、というのだ。
かつて、チョットマがクシに襲われたとき、白い蛇が現れたからだったが、本人はちっともそれを信じる気持ちはない。
「私、竜神様とは関係ないし」
もちろん本当は、ライラはこの逸話を持ち出したわけではない。
チョットマがレイチェルのクローンであることを指しているのだが、それを口にすることはまずない。
ただ、「チョットマは特別」という空気が、隊員達の中に、そしてエリアREFの住民達の一部にも、ないとはいえなかった。
「で、どうだったんだい」
YMUはヤード・ムサシの略で、一直線の通路SMU、つまりストリート・ムサシを軸に上下左右に細い通路が複雑に入り組んでいるエリア。
ニューキーツの街の西端のゲートから侵入し、SMUを侵攻してくる敵を待ち伏せ、攻撃するに最適な要衝である。
つい半時間前、チョットマはそこでまたクシに襲われたのだった。