397 ニューキーツの前長官?
仕方ないことなのだろう。
なにしろ、前触れもなく、三万人もの市民がなだれ込んで来たのだから。
ただ、この次元には数百万ものアンドロが住んでいるはず。
もしかするともっと多いかもしれない。
それに元々、人の住む次元の物資のほとんどは、このアンドロ次元から供給されているものだ。
すぐにその態勢は取られるのではないか。
しかし、
「実は、今……」
と、ヌヌロッチが説明してくれた内容に、ンドペキは言いようのない不安を覚えた。
現在ここに、アンドロはわずか数百人しかいないというのだ。
「なん?」
口調が思わず強いものになってしまった。
ヌヌロッチの表情は益々曇り、「話せば長くなります。まずは……」
そう。
まずは市民をその居住エリアに案内するのが先決。
振り返れば、群衆の影がおぼろに見えている。
特段の変化はないようだ。
パキトポークは、苛立つ市民を前にして、首を長くして待っていることだろう。
「あ、いや、すまない。これから、いろいろ厄介をかけることになる。よろしく頼む」
ンドペキはヌヌロッチに頭を下げた。
「それから、言いそびれていましたが、あの女性。広場でカルベスを起動させた」
「ああ」
タールツーの件だ。
「あれは、タールツーではありません」
「は?」
なんとなくそんなことだろうと思っていた。
「あれは、キャリーです」
「キャリー?」
「ニューキーツの前長官です」
「えっ」
「以前、仕えていましたので、見間違うことはありません」




