394 溶岩?
ヌヌロッチが立ち去った方向に歩いていった。
あいかわらず灰色の空間。
何の目印もない。
平らな床が延々と広がっているだけ。
そういえば。
大昔、京都の山奥で殺人事件に巻き込まれたとき、目印のない笹原を真っ直ぐ歩いていくための方法をユウが話してたな。
そんなことを思い出したが、口にはしない。
あれはユウとの思い出話であって、スゥには関係ない。
イコマの記憶でもあるし。
振り返ってみれば、群集がかなり小さく見える。
見えなくなれば、どうすればいいのか。
戻れるだろうか。
「あそこ」
スゥの視線の先。
「なにかある」
薄い灰色一色の中に確かに、黒い小さな何か。
「油断するなよ」
「そっちこそ」
近づいても、動きはない。
「岩?」
「こんなところに?」
灰色の世界にぽつんと置かれたスツール?
さらに近づいていくと、それがスツールでないことはわかった。
黒と見えた色は、実際は赤黒いものだった。
「溶岩?」
「う-む」
スゥの描写どおり、それは真っ赤な溶岩の表面が固まりかけているときのようなものだった。
「さっき、地震があったから?」
表皮は黒く岩肌のようで、中身の赤く溶けた石のようなものが、その割れ目から見えていた。
「……これ」
呑み込んだ言葉。
生きている……。
中身の赤い石が肉塊のように思えた。
そして明らかに脈動していた。
恐ろしい考えが浮かんだ。
これは、ここに偵察に来たパリサイドの成れの果て……。




