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393 一時間経って戻らなければ、捜索隊を
ヌヌロッチが言いかけたタールツーのこと、というのが今になって気にかかる。
律儀なアンドロだから、ではなく、なにか重要な情報を伝えようとしていたのではなかったか。
ということを口実にして。
「そういうことだ。だから、隊長である俺が行くのがいい」
実際、東部方面攻撃隊の隊長だからといって、この群集を代表しているわけではない。
市民を前にして、隊長だから話せることがあるとは思えなかった。
「なにか、考えがあるのか。そんじゃ、任す」
パキトポークが折れた。
「性に合わないんだがな。ああいう連中を相手するのは」
群衆の中で喧嘩が始まり、隊員が鎮めようと躍起になっていた。
「頼んだぞ。一時間経って戻らなければ、捜索隊を」
ぐらりと眩暈がした。
「ん?」
「揺れたな」
眩暈と思ったものは、地震だった。
群集がにわかにざわついている。
立ち上がる者、叫びだす者。
「座って! 座ってください」
隊員が言い聞かせるように、それぞれのグループを纏めようとしていた。
「いざとなりゃ、こいつでも配るさ」
食料チップ。
さすがに三万人分はないが、少しは気分を和らげてくれるだろう。
「食ったことのある奴は少ないだろうがな」
「余計に混乱するんじゃないか?」




