385 行き先は、アンドロ次元
もう、ほとんどの市民はオーエンの声など聞いてはいない。
耳に届いてはいるが、意味をきちんと理解しようとする者はほとんどいない。
演説は、人々に闇雲に先を急がせるだけの効果しかなかった。
しかも、行き先はひとつ。
などと言われて、人波はいよいよパニック状態になった。
我先に前へ進もうとする人々が、倒れた人を踏み越えていく。そんな有様となった。
「どの廊下を進んでもよい。進めば、ゲートをくぐることになる! 行きたくなければ、この場から早々に立ち去れ! 街へ戻り、地下にでも潜れ!」
行き先は、アンドロ次元。
その言葉をちゃんと聴いた市民は、どれ程いたろうか。
アンドロ次元には、友好的に待っていてくれるアンドロ達がいる。
そして、前もってアンドロ次元の環境を確かめに行ったパリサイド。
彼女達二人が、水先案内人を勤めてくれるだろう。
オーエンのその言葉は、それまでの大音声に比べれば小さく、そして自信無げだった。
ただ、もう誰も聞いてはいない。
最後にオーエンがまた声を張り上げた。
「エーエージーエスのあるニューキーツに住んでいた自分の幸運を喜べ!」
イコマは確信を持った。
アンドロ次元に行ったパリサイド。
二人の女性だという。
ユウが!
なぜ!
そうか!
サブリナが!
父ホトキンと母ライラのために!
ユウは、それを追って!
くそう!




