345 きっと、そのうち
やがてその日はやってきた。
しかし、思っていたよりレイチェルの容態は重かった。
セオジュンは必死で介抱した。
来る日も来る日も。
サリとともに。
セオジュンは苦しんだろう。
しかも、苦しみは報われないかもしれないのだ。
それほどレイチェルは、瀕死の状態だった。
もともと、エーエージーエスでの傷さえまだ完治とは言えない状態だったのだから。
意識は戻らず、輸血もままならない。
いつ鼓動が止まってもおかしくない容態。
少年ひとりの手では、もう手の打ち様がなかった。
ライラが気づかないはずがない。
嘘のつけないアンドロ。
仕事を投げ出すことのないアンドロ。
セオジュンは覚悟を決めた。
ライラにすべてを打ち明けたのである。
ハワードにも名乗り出た。
マリーリにも。
ライラによって秘密裏にエリアREFの医者が呼ばれ、レイチェルの治療に当たることになった。
そうしてレイチェルは息を吹き返したのである。
そのことをンドペキらになぜ知らせなかったのか。
言わずもがな。
ただでさえ、歴史を捻じ曲げるという危険を冒している以上、それをさらに増幅させる恐れのあることは何としてでも避けたかったからだ。
ライラはこう言ったものだ。
「やれやれだよ。肩の荷が下りたよ。それにしてもレイチェルは強い子だねえ。間に合ってよかった」
そんなセオジュンに、もうひとつの葛藤が生まれた。
レイチェルのSPとして生きていくのか、約束どおりチョットマを見守っていくのか、はたまた、もうひとつの約束を果たすのか。
もうひとつの約束。
アンジェリナとの恋。
僕は、いつも君の傍にいるという約束を。
セオジュンは、アンジェリアとの約束を選んだ。
マリーリは言う。
「本当にうれしいことでした。娘をそれほどまでに想ってくれて、傍にいてやってくれているのですから」
ベータディメンジョンの奥深く、誰も行かない禁断の園。
エネルギー渦巻く過酷な装置の中で。
そして、初めて、朗らかな笑顔を見せてくれたのだった。
「私さ、失恋、もう二回もしちゃったし」
チョットマが楽しそうに、舌を出す。
「ンドペキとセオジュン?」
じゃ、スミソとプリブ、どう思う、なんて野暮なことは言わぬが華。
さまざまな経験を潜り抜けてきた君だから。
大人になった君だから。
「この歌、なんだか心に染みるんだな」
などとニヤリとするチョットマ。
そう。
君の心に染みた出来事の数々。
ニューキーツの街の面影と共に、たちまち思い出となって、君の心の奥底に沈んでいくのだろう。
そしてそれが、君のかわいい顔に素敵な陰影を醸し出すことだろう。
チョットマ。
そんな君を、死ぬまで愛す、という人が現れるよ。
レイチェルにもね。
きっと、そのうち。
おしまい
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
お楽しみいただけましたでしょうか。
次の編では、パリサイドの宇宙船が主な舞台ですが、アンドロ達の次元がもう一つの舞台になります。
どんどんSFっぽくなってきます。
例によって、ンドペキやチョットマ達は、またもや事件に巻き込まれます。
その謎を解くとき、ユウが呪われたこの体と言った意味、すなわちパリサイドとはなにか、ということが垣間見えてきます。
パリサイド------(美少女戦士 宙を歩くの段):トゥシー・イントゥ・ザ・ヒゥーチャー第3話
なろうNO N9650CH
やはり、ミステリー風味を加えたSFです。
パリサイドの宇宙船が主な舞台ですが、アンドロ達の次元がもう一つの舞台になります。
ンドペキに、チョットマに、何が待ち受けているのか、お楽しみに。
どうぞ、引き続き、お付き合いくださいませ。




