342 口を尖らせて
「んーと、長官が誰かなんてことじゃなく、もっと大切なこと。船長にはこういうことを話したの」
「うん?」
「パリサイド、アギからパリサイドになった人、マト、マトからパリサイドになった人、メルキト、アンドロ、クローン、そして偽ホメム、みんな人として同じじゃないかって」
グループを意識する必要もないんじゃないか。
そんな区別さえ必要ない。
忘れてしまえばいい。
みんな同じ。
みんな同じ人類。
「昔、人種の壁、民族の壁、国境という意識は消えたでしょ。人類はそれを乗り超えたじゃない、って。今、もう一度それができないはずはないって」
「ああ」
「船長も同意してくれたよ。元々、パリサイドにはそういう垣根の意識はないって」
コリネルスが発言した。
「それでこそ、ニューキーツ長官レイチェルってことだな。君でなければ出てこない発想だし、君でなければ言えないこと」
拍手が起きた。
「コリネルス、ありがとう。でも、もう私、長官なんてできない。そんな気がしないもの」
「まあ、いいじゃないか。まだ、体調も万全じゃないんだから」
ンドペキは立ち上がった。
「さてと、そろそろ夜も更けた。コリネルスが上手く纏めてくれた結論を持って、お開きにしようか。すべての謎は解けた、ってことでいいよな。最後に聞いておきたいこと、あるか?」
「聞いてみたいことはある」
そう言ったのは、コリネルスだった。
「強いて答えて欲しいとは思わないが」
「なんだ?」
「ん……、ンドペキ、おまえとイコマ、もしかして、同一人物なんじゃないか?」
んっ!
「最初、アヤはイコマを父親だと言った。今は、ンドペキと家族だという」
「……」
「そう感じることがある。というだけのこと。たいしたことじゃない」
思わずユウとイコマを振り返った。
どうする?
頷くユウ。
そして、ゆっくり口を開いた。
「そういうことにしたのは私。個人的な事情があって。それはね」
六百年前にユウが仕組んだことの大半を語った。
自分が何者か。
そしてイコマとンドペキに何をしたのか。
ごく短く。
触りだけを。
部屋から驚きの声が上がった。
「すまない。隠していて」
「なんてことはないさ。大助かりだったんだから」
「いや、まことにすまない」
案の定、チョットマが呟いた。
「パパ、ひどいよ……」
そしてンドペキに向かって、口を尖らせてみせた。




