340 ずっとホメムやって、長官やって、
「それに、私、あの頭の固い連中に愛想を尽かしていたというのかな、彼等は立場を貫いてるんだけど、なんていうか、許せない、という気持ちがあった」
みんなが苦しんでいるのに、私だけを守ればいいっていう、そういう考えが。
「あ、そうそう。チョットマ、私に代わって、すごく格好いい檄を飛ばしてくれたそうね。ありがとう」
珍しくチョットマが頬を染めた。
「ごめん。勝手なことして」
「ううん。本当にありがとう。結局、騎士団はあまり役に立たなかったけど、彼らが動いてくれたおかげで、アンドロ軍をかなり足止めできた」
アンドロ軍の主力が騎士団に向かったおかげで、キャリーの軍は背後を突けたのだし、ンドペキ隊はやすやすと侵攻できたのだ。
「私ね……、ずっと考えてた。前長官のキャリーとしてじゃなく、レイチェルとして」
レイチェルの話が新しいモードに入っていくのが分かった。
ンドペキにも、その概略を想像することができる。
きっと、コリネルスやスジーウォンにもできるだろう。
今、レイチェルの本心からの打ち明け話を聞いた後だから。
「みんなと一緒にいて、大げさに言えば、生きていくことって、こういう、なんていうか、さりげなく、そしてもっと一生懸命にならなくちゃって」
私の見ていたことって、ちっぽけなことっていうか……。
私だけが特別なんじゃなくて、みんな、誰もそれぞれに思いがあって……。
「当たり前だと思うでしょ。でも私、ずっとホメムやって、長官やって、大事なことが見えていなかった、みたいな気がして」
レイチェルが改めて部屋に集まった人々の顏に、順番に目をやり、最後にチョットマに止めた。
「わたし、チョットマをぶったことあるよね。洞窟で。それからあのときも……」
視線は次にンドペキに向かう。
「それまで、チョットマもンドペキも、誰もかれも、何も分かっちゃいないんだって思ってた。今にして思えば、被害者意識の塊みたいに」
でもやっと私、自分がひどい女だって気がついた。
「チョットマ、痛かったでしょ。チョットマは何も悪くないのに。自分の思い通りにいかないからって、手を上げるなんて」
レイチェルが立ち上がって、チョットマとアヤの間に座り直した。
アヤがレイチェルの手を握る。
レイチェルはチョットマに手を伸ばす。
チョットマが、照れながらもその手を握った。




