334 もう二度と頼るまい
その中枢は、すでに私が拘束を始めていました。
もちろん、秘密裡に。
なので、あのように統率がとれていなかったのです。
しかし、兵の数は予想以上に多い。
まるで、後から後から湧いてくるような勢いでした。
また、統制がとれていないということは、無謀な作戦も選ぶということですし、ゲリラ的な活動も辞さぬ、ということになります。
しかも、ニューキーツの防衛軍を壊滅させるのは、彼らにとって有利な戦いでした。
あの時点では、防衛軍は、念のため、パリサイドとの衝突に備えていましたから。
元々、外部からの敵に備えている軍です。
兵であれ、防御システムであれ。
政府の内部から、つまり後ろからの攻撃に、いとも容易く崩壊してしまったのです。
しかも、恐ろしいことに、強制死亡処置が始まっていました。
いたるところにタールツー信奉者はいたのです。
政府内は、表向きは平静を保っていましたが、実はガタガタの状態でした。
アンドロ軍が徘徊し、どこにタールツー信奉者がいるやもしれず、政府は機能不全と言っていい状態でした。
元々、政府内で働いている人の大多数はアンドロなのですから。
もう、頼むところは騎士団しかない。
しかし、騎士団はレイチェル個人の命令しか受け付けません。
そういう軍なのです。
たとえ長官の命令であっても。
いくら私が怒り狂おうとも、動かないものは動かないのです。
それほど強いわけでもないのに。
きつい言い方をすれば、お飾りのような存在なのに。
「ごめんね、ンドペキ」
レイチェルが顔をあげた。
「そんなことがあって、私、彼らに愛想を尽かしていたの。うーん、なんだか、もう二度と頼るまい、という気がしてて」
「そうか……」
まあ、いいさ、と言うしかない。
ンドペキは思った。
レイチェル指令の元、もっと早く騎士団と合流できておれば、状況は変わっていたかもしれない。
しかし、何がどう変わったというのだろう。
太陽フレアは襲来し、カイロスが起動され、市民は大挙してエリアREFの地下深くへ、そしてベータディメンジョンに避難した。
このことは変わりようがなかったはず。
ただ、ロクモンは。
命を落とした十数名の隊員は。
彼らは死なずに済んだかもしれない。
しかし、「まあ、たいしたことはない」と、応えるしかなかった。
「ごめんでは、すまないよね」
「もう、気にするな」
「うん……」
レイチェルの目に零れ落ちそうな涙が溜まっていた。
「先を続けるか? それとも」
「いいえ。続けさせて」




