331 成りすまし
でも、私は思いついた。
これは、使えるかもって。
このタイミングに……。
ね、キャリーって悪い人でしょ。
タールツーが解体されるというのに、まだ自分のことしか考えていなかった私。
元々、時間を遡って若い女の子になってからのことは、たいして考えていなかった。
その女の子が、誰の子か、なんてことは。
あいまいな計画だった。
ホメムであることを誰かが認めてくれれば、どこかの街でホメムとして生きていき、誰かホメムが死んだときにその街の長官に就任する。
そんな程度でしか、考えていなかった。
そんな私が考えついたこと。
そうだ。
私が死ねばいい。
私の子だと称する若い女の子を残して。
そんなストーリが頭を掠めていった。
タールツーの解体処理は秘密裡に行われる。
アンドロにその処分理由を知らせないため。
私は死んだことにすれば、タールツーにすり替わることができる……。
そうすれば、その女の子、実は私自身なんだけど、をホメムとして長官に据えることは容易い。
他のホメム達も、疑いを持つことはないだろう。
最初からキャリーの娘だということにしてあれば。
たとえ疑いを持ったとしても、ことを荒立てる人はいないはず。
ホメムは滅亡へまっしぐらの状態だから。
タールツーに関しては、心を入れ変えたと始末書でも出し、それを長官として保証すれば……。
時間の余裕はない。
タールツーの解体処理はすぐ。
私は決断しました。
タールツーの解体と同時に、タールツー名の始末書を書き、そこに署名しました。
そしてその直後、私、つまりキャリーは死に、治安省長官タールツーの顔をすることにしました。
「それでね、その後すぐ、レイチェルが長官に就任したのよ」
レイチェルがすっと顔をあげた。
キャリーではなく、毅然としたレイチェルの顔。
ンドペキは胸の中で、「レイチェル」と励ましの声を掛けた。
「不謹慎よね」
当時、太陽フレアの不穏な動きは目立ったものになっていました。
いよいよだっていう。
世界がこんなになることを頭では分かっていたけど、私、自分の使命を果たすことしか考えていなかった。
「使命って言ったけど、そのときはそう思っていた。今はもう、それが独りよがりだったって、わかる……」
レイチェルがまた顔を伏せた。
フェアリーカラーの長い髪が小さく震えている。




