325 すんでのところで踏みとどまっているレイチェル
「真打、登場!」
紹介の仕方が芝居ががっていたのだろう。
それとも、登場の仕方が大げさだったのか。
奇妙な興奮に包まれて、二人が部屋に入ってきた。
「レイチェル!」
「マリーリ!」
かつてロクモンを洞窟に迎えた時のレイチェル。
それを知っている者にとっては、こういう時のレイチェルの凄みが思い出される。
「忙しそうだね!」
声が掛かった方を見て、レイチェルは笑ってみせた。
しかし、すぐその後、ぐっと顎を引いた。
ニューキーツを治めてきた長官レイチェル。
しかし、ンドペキは違う感情も持っている。
ンドペキだけではない。多くの隊員が。
かわいそうなレイチェル。
健気に前を見つめるレイチェル。
すんでのところで踏みとどまっているレイチェル。
二人は、拍手を受けて人々の輪の中に入り、そのまま横切って、ホトキンの隣に座った。
厳しい顔をしている。
そして、チョットマと同じように、膝を抱え、前を向いた。
「さてと、二人が登場したところで、小休止ってのはどう?」
「いいね!」
「そりゃないだろ!」
「こんな気持ちで呑み直しなんて、できるか!」
「それは逆にレイチェルに失礼じゃないか?」
「もう一度、あの歌、聞きたいかも」
賛否、相半ば。
休憩を取りたかったわけではない。
レイチェルの顔色が悪いように感じたからだ。
目が合うと、レイチェルはいつものように微笑んだが。
「それじゃ、続けるとするか」




