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317 好きなシチュエーション

 あの次元に行くためには、アンドロでなければならない。

 しかし、自分にその役割があるわけではない。

 となれば、アンジェリナしかいない。



 ところで俺は、向こうで道に迷ったことがある。

 その時、一人のアンドロに出会った。

 あれはマリーリ。

 溶岩姿だったから、気づかなかったけどね。


 マリーリは、こちらが何も言ってないのに、その装置のある方角を指差してみせた。

 今にして思えば、向こうにアンジェリナがいる、と言いたかったんだろう。



 現に、そこに行くと、その装置があった。

 知っていなければ、それとは気づかないけど。


 きれいな芝生広場に、小さな池がポツンとあるだけ。

 カイロスを起動させたのも芝生の広場の丸い砂地。

 カイロスの刃を守っていたのは円形の泉。

 ゲントウはそういうシチュエーションが好きだったんだな。


 そして池の縁に、サンダルが二足。

 街で普通に見かけるやつ。


 アンジェリナとセオジュン。

 彼らが残していったもの。

 彼らはあの中にいる。

 俺はそう確信している。


 もう二度と出てこれないかもしれない。


 きっと、そうなんだろう。

 あの次元にアンドロでない人がいる限り。

 パキトポークや避難していった市民がいる限り。



 俺はこの考えに自信を持っている。

 でも、マリーリに確かめようとは思わない。


 娘の傍に居たいだろうに、レイチェルSPの仕事を選び、こっちの次元に戻ってきた。

 もう、娘がいる向こうには戻れないのに。

 仕事に忠実なアンドロだから?

 そうかもしれない。

 でも、そんな彼女に、真相はどうなのか、なんて聞きたくない。

 そういうこと。




 作戦室は呟きひとつ聞こえてこない。

 チョットマは目を潤ませているが、涙をこぼしはしなかった。


 さて、じゃ、なぜセオジュンは?

 そんな野暮な質問をする人はもういないよな。

 彼はアンドロだったけど、ま、アレだ。

 それで十分だろ。


 それに、もし質問が出ても、答えないぞ。

 次の話に、少しばかり関係するから。



 ンドペキはもう一度、隊員たちを見回した。

 そして、飲み物を手にした。


「こんなにおいしいワインなんて、かれこれ三百年は飲んでない。すごいよな、パリサイドは」

「おいしいワインの味? 覚えているような言い方だな」

 そう言いつつ、スジーウォンもグラスを床に置こうとしない。



 いよいよ、ハワード失踪の真相を話す時だ。

 まだ、約束の時間には間に合う。

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