316 そんな野暮な疑問は持ちっこなし
妊娠もしていないのに、子を産む?
そんな野暮な疑問は持ちっこなし。
精子と卵子、いや、お互いの髪の毛一筋あれば子は作れる。
ましてそれがアンドロとしてなら、技術はとうの昔に確立されている。
「アンジェリナはマリーリの娘。俺は、そう言い切っていいと思う」
本当に産んだのかどうかなんて、どうでもいいこと。
互いがそうだと思っているなら、親子だし、家族だから。
「だろ?」
「ふん。そういうことになるだろうね」
ただ、マリーリはアンドロ。
子があることは、ご法度ではないにしろ、極めて稀なケース。
公表するのは憚られたかもしれない。
あるいは、ゲントウから口止めされていたのかも。
いずれにしろ、マリーリはアンジェリナが自分の娘だとは公言しなかった。
ただ、頻繁にエリアREFを訪れてはいた……。
だとすれば、チョットマが見たマリーリの行動には説明がつく。
あの熱波の中、マリーリはやっと気がついたんだ。
娘、アンジェリナの居場所を。
彼女は考えた。
ベータディメンジョン、アンドロの次元にゲントウが作った装置がある。
あの次元を人が住める環境に整えるための装置。
渦巻くエネルギーを鎮静化させる装置。
その装置を起動させるには誰かが操作し、キーを入力しなくちゃいけない。
キーってたって、英数字が何桁かなんてものじゃないはず。
アンジェリナの肉体に組み込まれた何か。
究極の生態認証。
例えばDNAそのもの。
そんな類のもの。
その本人でなければいけないもの。
そして、安定的に運転し続けるためには、意思を持った人が必要。
では、ゲントウはその役割に、誰を選んだろうか。
やっとマリーリは気づいたんだ。




