307 今にして思えば
ユウ。
パリサイド名JP01。
忙しく、帰宅はいつも深夜。
それでも帰ってくればいい方。
しかし表情には、大仕事をやり遂げた喜びがある。
かつて、二十世紀最後の頃、阪急東通りや心斎橋、京橋や天王寺で遊んで回った頃、イコマとユウが知り合った頃の三条優にすっかり戻っていた。
「ノブ!」と呼んでは駆け寄ってくる。
そんなユウに。
イコマは走馬灯のようにあの頃のことを思い出す。
自分の思いを真っ直ぐに伝えられない、ふがいなかったあの頃を。
イコマ。
かろうじてパリサイドの体を持つことができた。
きっとユウが、最後に捻じ込んでくれたのだろう。
もうアギではない。
これからは、記憶は普通に失われていく。
しかし、忘れることはない。
何百年経とうとも。
ユウ、ありがとう!
スゥ。
ユウが作ったクローン。
ニューキーツ近くの海岸でユウに襲われ、意識を同期した。
それからというもの、彼女は苦しみ続けてきた。
自分の意識と、ユウの意識との間で。
なんとか自分を保とうと。
既定だったとはいえ、ンドペキを愛し、それが成就した。
もしかすると、ユウ本人より幸せになったといえるかもしれない。
ささやかではあるが、船上で結婚式まで挙げたのだから。
ンドペキとアヤとの家族。
これ以上の幸せがあろうか。
あっさりした顔をしながらも、人知れず喜びに震えていることがある。
これを知っている人はいない。
ンドペキ。
ユウが作ったイコマのクローン。
死にたい。自分の無為な生を終わりにしたい。そんな考えに取りつかれていた自分に、新鮮で薫り高い風を送り込んでくれたスゥ。
今にして思えば、洞窟で見せたスゥの涙。
あれが生きる希望になったのだった。
ンドペキは思う。
自分が今あるのは。
スゥだけではない。
チョットマ。
隊のみんな。
ハクシュウ。
感謝してし過ぎることはない。
家族の時間を持つため、隊のリーダーはスジーウォンに代わってもらうことにした。
ありがとう、スジーウォン。引き受けてくれて。
今から、発表させてもらうよ。




