304 後戻りはできません
大通りを西に進むと、時間はゆっくり流れる。
行けばいくほど、その差は大きい。
「この辺りは、それほど西でもないので、過去というほど昔には行けません」
「ほう! そういうことなのか!」
「そこに見えているゲートはせいぜい半年前まで。さらに西のゲートを使えば、百年前でも遡ることができますが」
門と見えるが、実はその奥行きは深く、希望する位置に次元移行のゲートをこの少女が開いてくれるという。
ンドペキは少し迷った。
現時点、あるいは数時間前?
「ただし、決まりごとがあります。遡ったとしても、起きてしまった出来事を大きく変えることはできません」
「変えたら?」
「出来ない、ということです」
「スゥ」
「任せるよ」
「現時点で」
「あいよ」
「さあ、行ってください。あの門です。通れば後戻りはできません」
「わかった。ありがとう」
「最後に忠告しておきます。マトが通過するのはこれまでにないことです。何が起きるか、保証はできません」
「ああ」
「それから、もうここへは戻って来れません。いつかまた、ここへのゲートが開発されるまでは」
「分かっている」
ンドペキはスゥと手をつないだ。
門を通り抜けた。
現時点でよかっただろうか。
数時間前の方がよくはなかったか。
しかし、わずかなそんな過去に立ち戻ったとして、なにができるだろう。
きっとアヤは無事だ。ユウがいる。
そう信じよう。
一瞬にして、次元を飛んだ。
暗い……。
ここは……。
エーエージーエスのチューブ!
暑い!
摂氏百度を超えている。
なに!
う!
いたるところ死体で埋めつくされていた。
これはいったい……。
尋常な数ではない。
見渡す限りの死体……。
白骨化しているものもあれば、まだくすぶっているものもある。
アンドロか……。
まさか、オーエンが。
オーエン!
オーエン!
きさま、何をした!
しかし、声は空しくこだまするだけだった。




