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303 後を頼む!

 案の定、ヌヌロッチは眉間の皺を深くした。


「戻りたいと」

「頼む」

「……むう」


 ちらりとヌヌロッチの顏に怒りが浮かんだ。

 治安省長官のプライドを傷つけたような気がした。


 しかし、構ってはいられない。

「家族が、俺の娘が取り残されているんだ。頼む」


 見る間にヌヌロッチの顔から怒気が消えてゆく。

「娘、ですか……。アヤが。あの、登録上はバードとなっている女性」

「そう!」



 バードはアヤ。それを知っているはずなのに、ヌヌロッチはあえてその名を挙げた。

 アヤはもうその名を使おうとはしない。

 イコマやユウを忘れていた時の名前だから。

 忘れてしまったからこそ、そんな名に変えてしまったのだからと。


 ヌヌロッチは意外にもあっさり、「では、案内しましょう」と頷いた。

「家族」、「娘」という言葉に、アンドロなりに敏感に反応したのだろう。


「ありがとう。恩に着るよ」

「では、いつに?」

「今すぐ」



 すまぬ!

 パキトポーク!

 後を頼む!




 ヌヌロッチが案内してくれたのは、意外にも近い場所だった。

 北の大通りを西に進み、細い通路に入っていく。


「ここがいいでしょう。もっと先にも係員がいますが、ンドペキの場合は」


 小さな門があった。

 これ以上、行ってはいけないといわれている門。

 開け放たれ、脇に小屋がある。

 もちろん、クリスタルで作られていて、小さいながらも光り輝いている。


 ヌヌロッチが入れと手招きする。

 中は思った通りの狭さで、小さなテーブルが一つ。

 テーブルの向こうに小柄な可愛い女の子が座っていた。



「今日は珍しいね!」

 女の子が、ンドペキとスゥを代わる代わる品定めするような目で見て、二人かい、と聞いた。


「そう。頼みます」

「やれやれ! せかっくこっちへ来たというのに、何が不満なんだろうね! これで何人目だい!」

「はあ」

「アンドロ以外の連中を通過させるって! パリサイドやらなにやら! 今日は、むちゃくちゃな日だよ!」


 女の子の姿とは裏腹に、言葉遣いはライラそのもの。


「あたしゃね! こんなに活きのいい体になった。その途端に、なにが太陽フレアだい! よってたかって右往左往しやがって! で、名前は!」

「ニューキーツのンドペキとスゥだ」

「で、どこに!」

「どこって、ニューキーツに」

「おい! ヌヌロッチ! どうするんだい!」



 ヌヌロッチが聞いてくる。

 現時点でいいですね。


「現時点?」

 それとも、少々遡りますか。

「遡る?」

 忘れましたか?

「えっ?」

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