301 二人が喜ぶなら、どんなことでも……
目覚めは悪かった。
後頭部に激しい痛みがある。
むう……。
「どう? 気分」
「あ……」
装甲は脱がされていた。
「凄い汗、かいてたよ」
「そうか……」
スゥが額の汗を拭ってくれる。
全裸で毛布に包まれていた。
「体中、真っ赤だった」
ンドペキは大きく息を吐き出した。
「すまなかったな」
「ううん。装甲を脱がすとき、恥ずかしかったけど。みんなが見てて」
恥ずかしいのはこっちだろ、と言おうとしたが、スゥの唇に塞がれてしまった。
また、夢を見ていた。
コンフェッションボックスに、あのバーチャル空間を作るとき。
嬉々として悩んだあの時の夢……。
大阪福島のマンション。
ユウが喜ぶように。
アヤが喜ぶように。
時期的に嘘があってもいいかな。
あのオルゴールを玄関に飾っていた頃、すでにあの椅子はなかったはず。
でも、どちらも我が家の情景を語るうえで欠かせないもの……。
珈琲はどのメーカーを飲んでいたっけ。
机の上の雑誌は?
PCは何を使っていたかな。
窓から見える景色は……。
そもそも、当時の自分の容貌は?
楽しかった。
そんなことを考え、ユウやアヤが喜ぶ顔を想像するだけで幸せを感じた。
たとえそれが記憶の中から生み出された仮想の光景でも。
アギの自分ができることはそれくらい。
二人が喜ぶなら、どんなことでも……。




