300 無事な顔を
「ヌヌロッチ、悪いが、これからはパキトポークと相談しながらやってくれないか」
「いいですよ。その方がいいとおっしゃるのなら」
ヌヌロッチはあっさり承諾はしたが、疑問は隠せない。
「でも、なぜです?」
単刀直入に聞いてくる。
「なんというのか……」
「疲れすぎているんですよ」
「まあ、それはそうだが……」
そもそもこの次元に来たのは、フライングアイのイコマに代わってユウを追うためだった。
群衆に押し流されてだが。
しかし、この次元に来たパリサイドはユウではなかった。
他方、ここへ来たことで、失ったもの。
アヤ。
彼女のことを思うと、居ても立ってもいられない気持ちになる。
太陽フレアが吹き荒れる地球で、無事にしているだろうか。
ニューキーツの政府建物内にまだいるのだろうか。
それともエリアREFに移動しただろうか。
ないしはその下に広がるといわれる避難所に。
そもそも、地球は人が生きていける環境をまだ維持しているだろうか。
あるいはパリサイドの宇宙船に移動しただろうか。
ユウはアヤを放ってはおかないはず。
力づくでも連れて行こうとするだろう。
しかし、アヤは父母であるンドペキとスゥを待って、心を決めきれないでいるかもしれない……。
今、何の躊躇もなく、心の底からアヤを「娘」と呼ぶことができる。
いったい、どうしている。
会いたい。
無事な顔を見たい。
傍にいたい。
できることなら、言葉を掛けたい。
アヤ……。
地球に戻りたい!
その気持ちが、膨れ上がっていた。
ここの市民を捨てて?
パキトポークに押しつけて?
そう。
もし、地球が消滅しかかっているとしても、戻りたい!
そこで、アヤを探す!
たとえ、瞬時に命が無くなったとしても。
火の玉になった地球を一目見るだけのことになったとしても。
そこにパリサイドの宇宙船が浮かんでいるのを確認するだけでもいい!
この気持ちを、ヌヌロッチが気づくはずもない。
愛という感情の薄いアンドロ。
今も、淡々と、今後のことを話している。
ンドペキの頭には、すでに入ってこない。
「パキトポークと……」
頭が真っ白になった。
倒れる……。
スゥ……。
アヤ……。
その意識だけを残して、ンドペキは倒れた。




