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3 カイラルーシの夜

 夜の街路は雪混じりの雨に濡れ、ほのかな黄色い光が、平板なコンクリートの舗道に不思議な模様を描いていた。

 雨はやみ、空は晴れ渡っている。


「静かだな」

 人通りはほとんどなく、市民に対する何らかの統制が敷かれていることが窺われる。


「つけられてるよ」

 と、追い越しざまに少年が呟いていった。


 む!

 緊張が走ったが、意識的に悠然と通りを歩いてゆく。



 カイラルーシの街はニューキーツと異なり、寸胴なまるでビアグラスを伏せたような小さな建物が建ち並んでいる。

 整列しているところもあれば、ランダムにかなりの間隔をあけているところもある。


 黄色い光は、それらの建物内部から、金属的な光沢を持つ外壁を通して発せられている。

 それぞれが住宅であり商店なのだろうが、よそ者のふたりにはその区別がつかなかった。

 どれもこれも同じようなサイズ、同じ外観。

 街の中枢はすべて、これら寸胴建物の地下にあるとは聞いている。



 ニューキーツ東部方面攻撃隊隊員、スジーウォンとスミソ。


「厄介だな」

 建物がすべてシリンダー状であるため、待ち伏せして追手を捕まえるタイミングが難しい。

 見を隠すような物影もない。

「二手に分かれるか」



 カイラルーシは地球上で最も大きな街で、公称人口百十万。

 武闘派として有名だ。

 ニューキーツでは許されない街中の武装も、ここで見咎められることはない。

 防衛軍、攻撃軍という区別もなく、軍の行進もよく見かける光景だという。

 スジーウォンとスミソも、武装したまま人通りの少ない夜の街を歩いていた。



「抜かるな」

 スジーウォンの言葉を背に、スミソはするりとひとつのシリンダーを回り込んだ。


 黒豹とあだ名される、隊一二を争う俊敏さを持つスミソ。

 俺達を何のために。そう心の中で呟いてから、尾行者の後ろにつける。


 あれか。


 相手は装甲は身に付けていないようだ。

 黒いロングコートにつば付き帽。よく見かける服装だ。

 背丈は小さく、華奢な体つき。



 建物に窓はない。

 何の飾り気も無いシリンダー。

 中に、人がいるのかいないのか見当もつかない夜の街角に、監視カメラだけが生き物のようにレンズを光らせていた。



 スミソは小型のレーザー銃を構えた。

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