293 デートはしばらくお預けだ!
違う。
そう感じ始めた。
なんとなく、かなり歩いてきていた。
誰にも会っていない。
「ん? あそこ」
アンドロの溶岩が道端に蹲っていた。
「聞いてみるか」
近づいていくと、何も言わないうちから、手を出してきた。
そして指差した。
「ありがとうございます」
「こっちね」
示された方向に、歩いていった。
しかし、自分達の部屋らしき建物はない。
「どこも同じだ。目印、なんかある?」
「さあ」
参ったな、ばかりを繰り返しても、どうなるものでもなかった。
「街はずれか」
クリスタルの建物が、なんとなくまばらになったように感じた。
「そうみたい」
「ん?」
「ほら」
見れば、少し先で建物が途切れ、真っ暗な道がまっすぐに続いているだけになった。
遥か彼方に小さな明かりがひとつ。
「戻ろう。さっきのやつ、いったい、どこを教えてくれる気だったんだ?」
「私達が行き過ぎただけかも」
「まあな」
戻るにつれ、クリスタルの放つ光が急速に増してきた。
一気に夜が明けてきたのだ。
「妙な感覚だな」
建物の明るさで時刻を知るというのは。
やっとのことで、自分達の部屋に辿り着いた時には、すっかり明るくなっていた。
顔を見るなり、パキトポークが噛み付いた。
「デートはしばらくお預けだ! 居場所を明らかにしておけ!」
「すまん」
「何時だと思ってるんだ! もう、昼を回っているぞ!」
えっ。
ンドペキとスゥは顔を見合わせた。
迷ったとはいえ、うろついていたのはせいぜい二時間ばかり。
そういや……。
場所によって時間の流れるスピードが異なると言ってたな。
「凄まじいな。この時間差は」
「慣れるしかない?」
「そうはいくか」
「お腹、すいたね」




