28 情報が足りない
「寝に帰る必要がなくなったからなのか、離れられない理由があるのか」
「両方だろう。まだ自分の軍さえ統率できていないんだから」
タールツーが長官居住区から離れない件について、意見は割れていた。
統率力に疑問を持つ意見。つまりまだ、政府や行政機関はタールツーの思い通りに機能していないという考え。
いや、そうではない。使者の一件のような指示系統の混乱は、意図的にされているという意見。つまり我らを翻弄するために。
騎士団の動きが読めないからではないか、という意見もある。なにしろ、騎士団が篭るシェルタは長官居住区に直結している。
そして、そもそもタールツー軍は、統一された隊なのか。違うのではないか、という考え。
「やつら、もともとタールツー直属じゃなかったんじゃないか。治安省にいた連中だろう?」
「タールツーは治安省長官だぞ。直属でない兵がいるのか?」
結局、そんな疑問だけが残ってしまう。
「ヌヌロッチとかいう男の情報を待つしかないな」
レイチェルSP、ヌヌロッチ。
食料省の幹部だが、近々治安省へ転籍になるという情報があった。
「その件、どうも腑に落ちない」
「そうだな。今回の配置換えは、タイミングからみてタールツーの意図だ。治安省へ送るとなれば、タールツーの信任が厚いやつということになる」
「あるいは監視のために手元に置いておこうとしているのか」
「ハワードは信用してよい、と言っているが……」
ただ、ハワード自身も、ヌヌロッチの移動の意味が分からないのだった。




