203 諦めてはいないんでね
ンドペキは、沸騰する怒りを押さえ込んで、言葉を返した。
無視しても、事態が好転するはずもない。
それなら、何としてでも会話を続け、突破口のヒントでも得たい。
「あんたら、俺たちがなにをしようとしているのか、興味がないんだよな」
できるだけ穏やかな口調で。
ニューキーツをアンドロの手から取り戻す。
このことが、世を捨てたアギにどう響くだろう。
共感を得られることはまずないだろうが、藁にもすがる思い。
返答はない。
太陽フレアの襲来に備える。
これは響くだろうか。
声が返って来た。
「で、ンドペキ、なにをしようと?」
「うちの女性隊員が、緑色の髪を持っている。別の隊員がカイロスの刃を取り戻しに」
「ほう」
男の声が笑った。
「で、おまえは?」
ンドペキは詰まってしまった。
自分達の作戦は太陽フレアと何の関係もない。
ん?
この声、ンドペキという名を呼んだ!
名乗った覚えはない。
スゥや隊員が口にしただろうか……。
「俺たちは、その、儀式のようなものを正しく行えるように。そして、市民を避難させるために」
思い付きを口にしながら、男の声が自分の名を呼んだことの意味を考えた。
「なるほど、それなりのことは知っているようだな」
ん?
声に聞き覚えがあるような気がした。
「詳しいことは知らんさ。アンドロが街を掌握していたら、色々と不都合があるだろう、ということだ」
それきり、声は黙り込んだ。
ンドペキ達は再び、慎重な足取りで歩を進めた。
さあ、次なるシナリオは、なんだ。
砂が舞い上がる。
生き物の姿はどこにもない。
魚はおろか、貝も甲虫の類も、海草さえない。
砂と小石と、そこここに散らばる岩だけの世界。
ただ、何らかの意識に見張られているという感触だけがあった。
再び男の声が聞こえたのは、百歩ほど進んだときだった。
「どこへ行くつもりだ、手を繋いで。それとも、ダンスの練習か」
嫌味なことを言いやがる。
「あまり楽しそうには見えないぞ」
「諦めてはいないんでね。外に出る」
「ふっ」
笑いたいなら、笑えばいい。
中途半端な気持ちのお前達と違って、俺たちは本当に、真剣に生きているんでね。
そんな嫌味を言っても、どうなるものでもない。
ンドペキ達は、手を繋いだまま、また歩き出した。




