187 仕組まれたストーリー
少年の下半身はイルカの尾のように、ヒレがついていた。
ヒレをゆっくり捻らせながら、少年は少しずつ後ずさりしていく。
人魚のお出ましかい!
くだらぬシナリオを!
頭に血を上らせている場合ではない。
そんな反応が、敵を喜ばせる。
「ここで何百年も静かに暮らしてきたんだ」
少年がふわりと海底の砂に座り込んだ。
まるで人魚姫のように、尾をくねらせて。
「もうすぐ、他の人も来るよ。僕らの話を聞いて」
ンドペキは銃を構え直した。
「おじさんたちが何をしようとしているのか、知ってるよ。この街の長官に用があるんだよね」
やはり、侵入者である自分たち向けに仕組まれたストーリー!
「それでも破壊するというなら、仕方ないけど」
ンドペキは少年の顔に向けて、引き金を引こうとした。
と、スゥの手が伸びて、ンドペキの腕に触れた。
「待って」
緊迫した声が聞こえた。
「やめた方がいいと思う。この人、実体がある」
ンドペキは改めて少年を見つめ、ゴーグルのモードを切り替えていく。
確かに反応はある。
しかし、それがみなまやかしでも、実態があるようにゴーグルは反応するのだ。
「実体というか、存在を感じる」
「しかし」
「信用してもらうしかないんだけど、僕らはこういう生き方を選んだんだ」
少年の声が海水を伝わってくる。
「自己紹介したいけど、名前はないんだ。大昔、僕が地球上で普通に暮らしていた時のことは、一切忘れてしまったしね」
でも、今の姿を見せることはできると、少年の姿が変化した。




