274 持て余しているだろうある思い
頭から爪先まで純白の装甲に身を包んだ戦士がシェルタに入ってくるところだった。
「スゥ……」
語尾のあいまいなアヤの呟きは、その姿があまりに凛々しいものだったからだろう。
そう思いたかった。
アヤに今、湧き上がっているだろうある思い。
持て余しているだろうある思い。
その思いから来た呟きではないことを祈りたかった。
イコマとの同期が完全化しない理由。
その理由にも予想がついていた。
そこにはアヤの思いが絡んでいる。
その思いの元。
想像することができる。
アヤは俺を、エーエージーエスから救い出してくれた東部方面攻撃隊の隊員として接してきた。
そしてスゥは、エーエージーエスに飛び込んでくれた恩人。
あの洞窟での暮らしは、その関係の上に成り立っていた。
それが、今になって。
イコマとJP01だけでなく、俺もスゥも、実は六百年前に一緒に大阪で暮らした家族だといわれても、にわかには心の整理はつかないに違いない。
なにしろ、アヤの態度には、信頼や感謝や、親しみや友情といった感情以外に、少なからず特別な感情、つまり一人の男に対しての好意、が混じっていると感じたことがあるのだ。
その好意は、チョットマの思いの陰に隠そうとはしていたが。
翻ってその感情がスゥに向かうとき、恋敵に抱く思いに繋がっていくことになる。
自分のこの見立てに自信を持っているわけではない。
ただ、その困惑が的を外しているとも思っていない。
イコマは、俺が感じたこの印象を認めようとしなかった。
アヤはイコマとユウの養女であり、愛してやまぬ存在。
そして、俺はイコマのクローン。
生まれては消える小さな感情であっても、男女の好意というようなデリケートな部分で相違があれば、意識の一体化は不完全なものにならざるを得ない。
スゥが周囲の視線を集めながら、近づいてくる。




