252 すべてのことが一度に起きました
すべてのことが一度に起きました。
元々描いていたシナリオは崩れ去りましたが、中間をはしょれば結果は同じことです。
ついに、カイロスが起動されるのですから。
直ちに私は自分の部隊に、ンドペキ隊を援護するように命じました。
ただし、隠密に。
いざとなれば、共闘していることを明らかにしてもいいが、にわかには信じてもらえない。
裏で動く方が好都合だと指示しました。
騎士団は無視していい。余力があれば助けてやれ。
まずはレイチェルとンドペキの命を守れ、と。
なぜか。
そのとき既に……。
「言わないでも、わかりますよね」
そうして、私はあの芝生の広場で待ちました。
カイロスはあの広場で起動されることになっていたからです。
職員に、建物の奥へ避難するようにアナウンスを命じました。
オーエンの声を、私も聞いていたからです。
ベータディメンジョンへのゲートがどこに開かれるかを知っていたのです。
ヌヌロッチには、あらかじめ、暫定長官として指示を送ってあります。
避難してくる市民の対応をするようにと。
レイチェル名では、SPを解任すると。
SPを解任すれば、ヌヌロッチがベータディメンジョンで心置きなく力量を発揮してくれることを信じていました。
できるだけ多くの市民を、ベータディメンジョンに避難させなくてはいけません。
ニューキーツ長官として、これはすべてに優先する事項です。
昔々からニューキーツの避難地はエリアREFの地下深くと言われてきました。
実は、何度か視察に行ったことがあります。
整備はされているし備蓄もそれなりにある、でも、とてもとても。
あそこで暮らせるのは、せいぜい五十年? 三十年?
人が、あそこでその一生を終えるとしたら、と考えると、私は耐えられないと思っていました。
ここはニューキーツ。
エーエージーエスのあるここだけでも。
オーエンは憎々しい男ですが、実力はあります。
ゲートは開かれるでしょう。
ゲントウも信じることのできる人物だと聞いています。
ただ、私は市民より一足先に行かねばなりません。
避難してきた市民の対応をしていられないからです。
私は、タールツーとしても、キャリーとしても、市民の前に立つわけにはいきません。
顔を見られることなく、直ぐに時間を遡るつもりでしたから。
「ごめんね、チョットマ」
「えっ?」
「あの時」




