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244 このどうしようもない違和感

 ニューキーツの街を、アンドロのタールツーから奪還する。

 レイチェルを亡き者にしようとした極悪人を成敗する。

 その御旗の元に、俺達は戦っていた。

 しかし、このどうしようもない違和感。


「本当は、俺はずっと悩んでいた」


 とはいえ、レイチェルのシェルタ探しを理由に、時間稼ぎをしていたつもりはない。

 これは勘違いしないで欲しい。

 相手が見えない戦いほど、戦い難いものはない。

 ハクシュウから預かった東部方面攻撃隊。

 一人ひとりの命。

 何としても守らねば。

 そう考えていた。


 だから、あの連中、ドトーを筆頭にするレイチェル騎士団と合流した時には落胆したよ。

 ドトーがあんなに頭の固い奴だったとは。

 言い方は悪いが、立場を重んじるばかりに、大切なことが見えていない奴。

 忠義の本質を考えず、保身を図ることのみに長けた奴。


 俺はそう感じたね。

 こんな連中との合流を画して、時間を空費した自分に腹を立てたね。

 兵の問題じゃない。

 きっと、ドトー個人の問題なんだろう。

 そう思いたい。




「ところで、ヌヌロッチに聞いた話。芝生広場でカイロスの刃をチョットマから取り上げ、装置を起動させたのはキャリーだったという。前長官だ。そしてヌヌロッチはこうも言ったんだ」


 元々タールツー軍なんていなかったんじゃないか。

 それどころか、そもそもタールツーなんて、いなかったんじゃないか。


 そしてもう一つの情報。

 ライラとチョットマから聞いた話。


 エリアREFのバー、ヘルシードのマスターが調べた情報。

 タールツーというアンドロは実在した。

 しかし、数年前に解体処理になっている。

 記録の上では。


 ちなみに、解体処理は廃棄処分と違って、重い罪を犯したアンドロに与えられる罰らしい。

 なんとなくニュアンス、分かるよな。


 ヌヌロッチもその記録にあたったのかもしれない。

 だから、タールツーなど初めからいなかったのではないかと言い出したんだな。



「しかし俺は、違う、と思った。もしそうなら、辻褄が合わない」


 反レイチェルの立場をとる集団がいないなら、アヤちゃんやレイチェルをエーエージーエスに放り込んだのは、一体誰なんだ?

 親衛隊や防衛軍、そして攻撃隊の兵が次々と強制死亡させられていったのはなんだったんだ?


 思い出して欲しい。


 俺達がスゥのあの洞窟で、荒地軍と対峙していた時。

 大きな悪意の存在がなければ、ああいうことは起きなかったはずだ。

 何一つ。


「俺は、悪意のタールツーは実在したと思う。俺達が洞窟で武器を磨いていたあの時には」



 では、キャリーとは誰?


 ヌヌロッチが言うように、キャリーが戻ってきてタールツーを排除した?

 死んだはずの前長官が?

 親衛隊か騎士団を引き連れて?


 俺はさっぱりわからなかった。

 この次元に戻ってくる門で、あの女の子風の老婆が言った、あの言葉を思い出すまでは。



 今、謎は解けている。

 完全にだ。

 辻褄の合うストーリーを披露することができる。

 誰がどこで何をしたのか。

 真実のすべてを。



「しかし、俺から話すより、もっといい方法がある」


 元々静まりかえっていた部屋に、一層深い沈黙が落ちた。



「当の本人から」

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