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241 ハワードが残した言葉

「セオジュン」


 ンドペキはさりげなく言ったつもりだったが、反響は思った以上に大きかった。

「ええっ!」

 チョットマの声が響いた。

「セオジュンがハワード!」

「だと思う」

「そんな!」


「ありえないか?」

「え、いや、ええっ」


 証拠と言えるものはない。


「でも、今やセオジュンがアンドロだってことは、はっきりしてる」



「セオジュンが……」


 納得できないのか、チョットマは緑色の髪を人差し指で巻いては考え込んでいる。

 セオジュンと交わした言葉を反芻しながら、その可能性を吟味しているのだろう。


「アンドロの子供が、何の仕事も与えられず、エリアREFで過ごしてる? 絶対にないとは言えないが、めったにあることじゃないはず。違うか?」


 首を傾げたままのチョットマに向かって話しかけた。


「ハワードは時間を遡り、少年のセオジュンとしてエリアREFに住み着いたんだと思う。何年か前に」

 ライラの元に身を寄せて。


 そして、エリアREFの奥深く、つまりレイチェルの病室にする部屋にも自由に行ける方法を見つけ出した。

 あるいはライラに協力してもらって、あるいはそんな立場を与えてもらって。

 そうしておいて、パリサイドに依頼し、準備万端の上であの日を迎えたんだ。




 ハワードはうそつきだと思うかい?

 あの日の行動や涙は、演技だったと思うかい。


 違う。

 その時点では、ハワードはあんな事態が起きるとは思ってもみなかったんだ。


 時間を遡ったのはハワードであっても、遡った先に元からいるハワードは、つまり俺たちが会っていたハワードは何も知らないハワード。

 すべてを知って、計画を実行に移していったのは、セオジュンとして出現したハワード、ということ。

 ややこしいかい?



「なあ、チョットマ。セオジュンって、ハワードの小さい頃。どう? 今の推理、信憑性ある?」

「うううーん」

 似ていると言えなくもない。

 ンドペキはそう感じていた。

 ただ、セオジュンの顔をそれほどまじまじと見たことはない。

「似てる、かな。 そう言われれば……」



「セオジュンはチョットマにこう言ったことがある」


 僕が将来、約束を破るようなことになったら、どう思う?

 そのときチョットマはこう感じたそうだ。

 子供らしい例え話。


「でも、セオジュンはハワード。ハワードがチョットマにした約束をまた思い出して欲しい」


 私は貴方といつも一緒にいます。

 これからもずっと身近なところで。

 でも、私の姿は見えなくなるでしょう。


「この言葉。ハワードは本心で言ったはず。もちろんレイチェルSPとして。チョットマを見守ることは与えられた任務。たとえ、時間を遡ったとしても、姿を変えても、チョットマの傍にいるつもりだった」

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