24 我ながら頓珍漢
「それがさあ、私、避けられてるみたいで……」
「ふうん」
「友達が急に二人もいなくなって、気落ちしてるのね。それにそんなこと、会ったばかりの私に、べらべら喋れるはずもないし」
「だろうな」
「でもね、本当はとても快活な子なんだって。セオジュンやアンジェリナを引っ張っていくタイプなんだって」
「うん」
「ライラも気にしてた。ニニの顔色が悪いし、いつもなんとなく上の空だって」
イコマはチョットマと話すとき、意識していることがある。
ンドペキの意識を排除することはできないが、イコマとして話すこと。
幸い、それほど難しいことではない。
記憶や意識の共有は完了し、同期もしているが、同一人格としては未完だったからだ。
また、相手が眠っている間は、二つの意識が共存することはなく、比較的容易に自分自身になりきることができる。
小規模な戦闘が頻繁に起きることで、ンドペキとパキトポークとコリネルスが順に隊の指揮を執ることになり、幸い今、ンドペキは眠っている。
「それからさっき、シーランという子もいたんだ」
セオジュンの同級生で、一緒に卒業した男子。
「彼は逆に、なんて言うか、ハイテンション」
「へえ」
「でも、彼は関係ないみたい」
「うん?」
「私さ、なんとなく疑ってみたりしてたんだけど」
同年代の女の子であるアンジェリナとニニが二人ともセオジュンと仲良く、シーランは面白くなかったはずだから。
セオジュン十六歳、シーラン十八歳。アンジェリナとニニは共に十七歳。あくまで公称年齢だけど。
アンジェリナもニニもチャーミング。エリアREFのアイドル、じゃないかな。
それに、セオジュンは少女と言ってもいいほどにハンサムでしょ。
「シーランは、アンジェリナが好きみたいだし」
ライラ情報。本人の口ぶりからもそれは窺われたという。
「セオジュンは頭が良くて、政府への就職も決まってるでしょ」
妬みもあるかも。
セオジュンとアンジェリナは死んだわけではない。
それを先走って、シーランが犯人かも、と思うこと自体がどうかしている。
普段のイコマなら、やんわり諌めるところだが、そうはしなかった。
チョットマは命を狙われているのだ。
しかも、日々の戦闘で、死は隣り合わせでもある。
チョットマが、常に死を意識しているとしても、責められることではないだろう。
「私さ、シーランが二人を殺したのかもって。そんなこと、少しでも思ったことが、我ながら頓珍漢だなって」
チョットマが話題を弄んでいるのではないことは分かっている。
彼女なりに悩んでいる。考えようとしているのだ。
いてもたってもいられず、何かを掴みたいともがいているのだ。
「もう少し、ニニと話したいんだけどなあ」
アンジェリナとニニ。
小さな胸騒ぎがした。
特にアンジェリナ。SPが今、姿を消すとは……。
セオジュンとは一体……。
そんな不安を、イコマは愛しい娘、チョットマに知られたくなかった。